2014. 8.19 Tuesday
≪ 足元を見られる本邦株式市場 ≫
誰に? もちろん、海外投資家に・・・。
それは、4月以降の「投資部門(主体)別株式売買状況(差引金額)」に表れている。
4月の同売買状況動向は、概ねこれまでの傾向と同様に、海外投資家の買い越しに対し、個人投資家は売り超過。 信託銀行及び生損保は、小幅の売り越しであった。
ところが、5月に入ると一部の状況が一変する。
信託銀行が6,873億円を買い越し、実に2009年3月以来の高水準に躍り出たのだ。
因みに、海外勢は若干の売り越し、個人投資家は相変わらず大幅な売り超過。
信託銀行のこの大規模買いは、一部で報じられている通り、国家公務員共済・地方公務員共済・私学共済の3共済が5月以降、国内株式を積極的に購入したからに他ならない。
この共済は、来年10月にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)との一元化が予定されている。 しかし、3機関の平均国内株式のポートフォリオ比率はGPIF比で相当低く、一元化を前に資産配分を見直し実行した可能性が高い。
市場の一部には、6月上旬の厚労省のGPIFに対する国内株式投資比率上昇のための運用方針見直し(前倒し)要請を受け、早速買い出動したとの観測もあるが、未だ明白に確認されてはいない。
さて、6月に入ると各投資主体は、如何様な行動を取ったのか・・・?
海外投資家は、昨年12月以来となる5,649億円を買い越した。
信託銀行は5月比では若干減少したものの、2,745億円の買い超過であった。
その動きは、7月にも引き継がれるが、海外勢がほぼ同額の約5,000億円を買い越した一方で、信託銀行は先細りの890億円の買い超過に留まってしまったのだ。
では、以上から、何を読み解くべきか・・・?
GPIFの株式への資産配分拡大に関して言えば、現在の運用資産は約130兆円(内、国内株式投資比率約12%)であり、1%でも約1.3兆円が動くことになる。
ターゲットと言われている20%程度への引き上げを実現しようとすれば、ざっとその8倍の金額だ。 この5月以降の信託銀行の動向からして、GPIFが本格稼働を開始したとは思えない。
ところで、このGPIFによる株式への資産配分拡大は、アベノミクスでは成長戦略の柱のひとつに位置付けられている。 これはあくまで筆者の個人的な見解であるが、アベノミクス3本の矢の恩恵により目に見える顕著な効果が現われた事象は、株式市場の上昇に過ぎない。
更に、やや穿った見方をするならば、現政権発足以降の時間の経過に連れ、この株式市場の動向や水準が「生命線」となってしまった感が強いのだ。
政権運営基盤の強弱が可視化された政党支持率の変化と株価水準・動向には過去から一定の相関関係があり、ましてや消費増税可否の判断を目前に控える中にあって、株価水準の維持こそが最重要事項であると位置付けられていても過言でないだろう。
株式市場が崩れれば国民の消費意欲は一挙に冷え込み、スタグフレーションの暗雲が厚く立ち込めることになってしまう。 それは、アベノミクスが道半ばで頓挫したことを意味する。
海外投資家は、その「足元」を見てきているのだ。
つまり、いざとなればGPIFから「10兆円規模の株式購入資金が流れ込んでくる」こととなり、その蓋然性は日増しに高まっているという現実である。
よって、ジワリジワリと買いを入れ始めているのである。
ところで、個人投資家がどの様な意図や目的を持って執拗に売りを浴びせ続けているのか、筆者にはなかなか理解し難いものがある。
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