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2013. 1.18 Friday

「古き自由な北の国」の財政再建

我が国政府は、2013年度予算編成の基本方針で焦点とされる財政規律について、「債券の発行額をできるかぎり抑制する」と明記する一方、『発行額の上限は盛り込まない』模様だ。


ユーロ圏や米国においても財政再建が喫緊の課題となる中、「財政再建と経済成長の両立」に成功した経験を持つスウェーデンに再び注目が集まっている。

 

同国は、日本より高い緯度にもかかわらず、ノルウェー沖を流れるメキシコ暖流の影響を受けて、気候的には北海道に似る。 人口は約950万人と東京都よりも少ない。 尚、外交面ではナポレオン戦争以降200年近く戦争をしたことがなく中立政策を維持し、高度な福祉社会と人権を重んじる国家を築いてきたと言われている。

 


そのスウェーデンでは、日本とほぼ同じ時期
(1990年代初)にバブルが崩壊した。
80
年代後半からの金融規制緩和や金融緩和により、銀行の融資が大きく膨らみ不動産など資産価格の上昇を招いたことが原因で、このバブル崩壊によって大手銀行が軒並み影響を受けて金融危機に陥った。

 

これに伴い、実体経済も大きく落ち込み、91年から3年連続でマイナス成長となった。 92年にはスウェーデン・クローナが投機筋による標的となり、通貨防衛のため中央銀行(リクスバンク)は短期金利を何と500%まで引き上げた(同年9)

 

その後11月にはスウェーデンは固定為替相場制を断念。 するとクローナは直ちに9%減価し、その後1年でさらに20%減価することになった。

 

こうした金融危機に対する直接的な財政支出と金融危機に伴う景気後退による財政支出増加から財政収支が悪化してしまった(89年段階の財政黒字対GDP比3.3%→93年財政赤字対GDP比11.4 %同公的債務対GDP比45%→76)

 



その後、景気が回復基調に乗り始めていた
1994年以降、財政再建の必要性が認識されることとなった。19949月の総選挙によって、政権は社会民主党に移ったが、歳出削減と増税を行って財政再建に努めた。

 

1994年から1996年まで財務大臣を務め、後に首相となったヨーラン・パーション氏
は、「
Den som är satt i skuld är icke fri (負債を抱えた者に自由はない)」という有名な言葉を作り、財政再建のスローガンとした。

 

 

94年の段階で、政府がこれほど財政再建に取り組まざるを得なくなった背景には、財政赤字の拡大により長期金利が94年に入って約半年で7%から11%まで急上昇したという市場からの圧力もあった。 海外投資家が93年の冬頃から、大量に国債を売却し始めたためである。

 

加えて、スウェーデンがEUに加盟するためのコンバージェンス・プログラムに添う必要があったことも財政再建を後押しした。 プログラムは、実際に95年6月にEUに提出され、一般財政赤字を97年までにGDP比で3%以下とすることが義務付けられた。

 


それまでの予算決定や財政管理のあり方こそが財政規律を緩めている原因と指摘されていたため、①予算決定プロセスを改定し、②歳出シーリング制を導入する等、財政規律を強化する努力も払われた。

 

結果、それらが奏功、1990年代末からは財政は黒字に転じ、2005年までに政府債務残高をGDP50%にまで押し下げたのである。

 

若干補足しておくと・・・。

 

「予算決定プロセス」の改定は・・・、

3年間の複数年度予算の策定、マクロ経済政策運営を踏まえた予算編成を実現、歳出総額や歳出分野への配分は内閣主導で決定。 そのほかは省庁の裁量に任せるというトップダウンとボトムアップを組み合わせたもの。

 

「歳出シーリング制」の導入は・・・、

中期的にGDP比で2%の財政黒字を維持するとの目標を踏まえて、予算策定時に2年間の経済予測を添付し、それに見合った形で3年の利払い費を除いた中央政府の歳出総額のシーリングを設けることとした。更に、省庁の枠を越えて分類される27の歳出分野とその内訳である約500の議決予算についても、それぞれの歳出分野に上限が設定されたのである。

 

中でも、この「シーリング」の拘束力は強く、仮にどこかの項目で歳出が上限を超えた場合には、他の項目で削減するという『ペイ・アズ・ユー・ゴー( Pay as you go )原則』に則り、歳出の再配分を行うもの。

 

例えば、医療の予算を増やすためには、必ず他の予算を削減しなければならない。 閣僚が予算制約を踏まえ、政治主導で意思決定する仕組みなのである。

 


尚、
94年から97年までの時期の主要財政再建策の特徴は、抜本的な歳出削減と歳入増加策にあった。 具体的には以下の通りである。

 

「給付削減」:

年金の物価スライド幅抑制、社会保障関係費削減、児童手当減額、失業手当の給付率引き下げ、農業者への救済金縮小、外来患者自己負担額上限額の引き上げ等

 

「負担増」:

医療費の自己負担引き上げ、高額所得者への緊急増税、キャピタルインカム課税強化等

 

「成長への配慮」:

固定資本投資を促進するための一時的な税金控除制度の導入、中小企業減税、ベンチャー投資への税金控除等

 




ところで、一般的には、「歳出削減
+増税といった財政緊縮策」は景気を悪化させ、それが更に財政を悪化させるという悪循環をもたらすと言われている。 わが国でも消費税引き上げなど財政再建のための取り組みが、かえって経済を冷え込ませてしまうのではとの懸念は払拭されてはいない。

 


では何故、スウェーデンでは、それらが克服され景気が回復したのだろうか・・・?

 

概ね以下の諸点が指摘されている。

 

「大幅な自国通貨安の定着」

変動相場制移行後、クローナは大幅に減価した。当時の実効実質為替相場をみてみると、1992年から大幅に自国通貨安が進行しており、94年から95年にかけて大きく輸出競争力が回復している。 これによる輸出の回復がスウェーデンの景気回復を支えた。

 

「企業部門の設備投資回復」

為替相場の減価、労働生産性の回復による製造業のユニットレーバーコストの低下、名目金利の大幅低下に連れた実質金利の低下等が、設備投資意欲を急激に回復させた。

 

 

さて、こちら をクリックして、日本・スウェーデン及び他の主な国の財政状況に関するデータの推移をご覧頂きたい。

 

一般政府とは、国・地方・そして社会保障基金(年金など)を範囲とするもので、各国の財政状態を比較するための基準である。また、純金融負債とは、国債などの借金の残高から公的年金の積立金などの貯金を控除したものである。

 

先ずは、日本とスウェーデンの純金融負債について。 日本の当該債務は、GDP比で100%を超えるが、スウェーデンはマイナス20 %である。これは即ち、スウェーデンは「一国全体で貯金をしている状態」を意味している。

 

また、財政収支(GDP)は、日本が依然右肩下がりトレンドにある一方で、スウェーデンのそれはリーマン・ショックや欧州債務危機を経てもゼロ近辺で安定していることが分かる。

 

ほぼ同時期に「バブル崩壊」を経験した後に辿った道程は、両国間であまりに異なるものとなってしまった。

 


スウェーデンの状況と照らし合わせると、輸出急拡大や一段の金利低下に多くを期待できないわが国は、早急な財政再建によって需要を冷やすことなく、S&BやIT投資の国家的促進支援など、長期的な生産性の向上を図りながら潜在成長率を上げて行くことが長期的にみれば得策であると言えよう。

 

しかし、逆に考えれば、財政再建そのものを放棄(若しくは逸脱し)、無理矢理経済を成長させようとすると、即座に更なる困難に突き当たることは明白である。
(
:不要不急の公共事業投資等によるもの)

 


ところで、財政支出に目標を設ける財政ルールは、再建を成功に導くには極めて有効で、そのルールは透明性・景気に対する柔軟性・予算のカバレッジの広さ・効果的なエンフォースメントメカニズムと組み合わせることが重要であるとの指摘がなされている。

 

最近では、2007年にスウェーデンが財政委員会を、2010年にイギリスが財政責任局を、更に、2012年にはオーストラリアが議会予算局を導入している。 成長率の楽観的な予測を防ぎ、政府に対してルール違反の警鐘を鳴らす「独立機関」の設置である。

 

昨年末に、金融市場をハラハラさせた米国の「財政の崖」も程度の差こそあれ、財政再建に向けての現実的対処という観点では、日本より遥かにマシな事象なのだ。

 

この様に、各国の事情は様々ながら、財政再建に向けては意識レベルが相当高い。


その様な中、昨年秋に物議を醸し出した「復興財源の流用」等はもっての他の代表格であり、日本が歩む「我が道」は、『薄氷の上に敷かれている』ことを忘れてはならない。

 


ところで「古き自由な北の国(Du gamla, du fria)」は、スウェーデン国歌である。


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