2010.9.18 Saturday
≪巧みの技をみせた財務省・日銀の為替介入≫
財務省・日銀は15日、約6年半ぶりに内外の外国為替市場で円売り・ドル買い介入を実施。 トドル円相場は、82円90銭近辺から85円台へと急反発し、17日のNY市場ではドルじり高基調の中、86円を目前にしたレベルで引けた。
私が為替ディーラーだった時代、日銀の介入を幾たびも目の当たりにしてきましたが、これまでのところ今回の介入は少なくとも3本の指に入るほど巧みに実行していると思います。
皆さんは「覆面介入」という言葉をご存知でしょうか・・・。
15日の介入は、それを実行したことを積極的に内外に示しつつドル円の取引水準を円安方向に持ち上げることを狙った「開示型」の押上げ介入と言えます。
また、受託銀行は大手邦銀のみでなく、幅広く内外の金融機関を通じて行われた模様で、これによって介入の事実は瞬時に多くの市場参加者に伝播されました。
この「開示型介入」は市場の流れを一変させる手法としては最も効果的とされていますが、断続的に介入が行われない限りその効果は急速に薄れてしまうといった弱点を持っています。
そこで考案し実行されているのが次の手法であると考えられます。 先ず、死守する防衛ラインを85円50銭に設定し、今度は極限られた金融機関のみに介入を委託するといった「隠密型」のもので、更に小口の金額を頻繁にオーダーし10銭ずつ防衛ラインを押上げて行きます。
大多数の市場参加者は介入の事実を確認できないため、理由を判明できないままドル円相場の底堅さを痛感させられます。 また再度の円高を狙った投機的なポジションは次第にそして着実に損切りさせられて行くことになります。
16日・17日は欧米市場でもこの「隠密型」の介入が行われた可能性が高く、日銀には介入を行った事実を即日に公表する義務はないことから、「覆面介入」と言われています。
17日のNY市場終値が85円85銭近辺であったことを考えると、今のところ大成功と言えます。
今後、「開示型」と「隠密型」を効果的に組合せた断続的な介入によってどこまでドル円相場を上方修正させることができるのかに注目してみたいと思いす。
米国政府との軋轢を回避できるであろう90円程度が目標とみてよいでしょう。 その過程で、依然として円高を狙ったポジションを保有するヘッジファンドがロスカットのドルの買戻しを行えば円安バイアスは強化され、95円程度を示現することも有り得るかもしれません。
但し、(実需筋を含めた)市場参加者の期待を裏切った場合、歴史的水準(例えば75円程度)までの円高がもたらされることでしょう。
要は、真剣且つ真摯な姿勢での「市場参加者との対話」が求められている局面なのです。
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