2013. 6.21 Friday
≪「麦わら帽子は、冬に買え」!≫
全国5証券取引所は恒例の「株主分布状況調査(平成24年度分)」結果を公表した。
報道等では、3月末の外国人の株式保有比率は前年比1.7%上昇して28%となり、07年3月末の27.8%を上回り過去最高を更新した等と強調するが・・・。
注目すべきは、そんな点ではない。
しかし、先ずは、今般の調査結果の要点を列記しておこう。
・ 個人株主数は、前年度比4.8万人増の4,596万人となった。
・ 投資部門別の株式保有比率は、外国法人等が上昇する一方、信託銀行・保険会社等が低下する結果となった。
・ 外国法人等の同比率は、前年度比1.7ポイント上昇して、過去最高となった。
・ 個人の同比率は、マイナス0.2ポイントと、3年ぶりに低下した。
・ 信託銀行の同比率は、マイナス0.9ポイントと、再び低下に転じた。
尚、個人株主数は、上場廃止会社の影響で79万人減少したのに対し、新規上場会社で33万人、株式分割・投資単位引下げ実施会社22万人、それ以外の既上場会社で28万人増加したとされている。
興味深いことに、個人株主数が増加したにもかかわらず、保有比率は低下してしまっているのだ。
因みに、保有比率が上昇したのは、外国法人等(1.7%)と事業法人等(0.1%)のみであった。
さて、冒頭で触れた注目すべき点であるが・・・、
それは、「各投資主体が、どのタイミングで株式の購入または売却に動いていたのか」、そして「ネットの投資金額(売買差引額)」の推移は、どの様な内容であったか」である。
( Image Photo )
( 写真をクリックして、図説ページを確認 ! )
その時系列的動向は、あまりに極端過ぎて詳細を説明するまでもないが、あえて解説するならば次の通りであろう。
・ 株価の低位安定が続いた2012年10月頃までは、ネット投資金額はどの投資主体において もせいぜい数千億円の範囲内でほぼ均衡していた。
・ 但し、夏場から晩秋にかけて、個人は概して売り越し超過。
・ 11月の衆議院解散時期を境に、海外投資家の買い越し額は急激に増加し始めた。
・ 12月下旬には新政権が発足したが、海外投資家の買い意欲は更に強まり、以降翌年3月まで、ネット投資額は概ね1兆円を超えていた。
・ 一方、国内勢はといえば、個人は12月にも5,000億円強を売り越していた。
その後、額は縮小したものの、基本的には売り超過のまま推移した。
・ 信託銀行は、売り越し額を5,000億円超へとその規模を拡大させ、生損保も同様に売りを先行させていた。
国内の機関投資家は、保有資産に占める株式の保有割合を一定に保つために売却を進めたとの背景もあろうが、もし相場観が良ければ(ここでは、あえて「アベノミクスの成功を信じていさえすれば」と表現するが)、12月や翌年1月に大幅に売り越す必要はなかったのではないかと思われる。
個人投資家には上述の様な内部規定等もないことから、やはり現実的にはアベノミクスに関して少なからず疑念も持っていたのではなかろうか。
これまで、所謂「失われた20年」の中で度々期待を裏切られてきたのだから無理もなかろうが、国内勢は総じて、「絶好の買い場」提供段階において「塩漬け銘柄等の売り逃げ」を目論んだのであろう。
4月に入ると、日銀による「異次元緩和」断行の影響等も加わり、株価(TOPIX)は5月23日前場には 1,289.77 へと上昇。しかし、同日に 1,188.34 へと急反落、その後現在では概ね 1,050〜1,100 での取引となっている。
因みに、東京証券取引所が公表した5月第5週(5月27日-31日)の3市場投資主体別売買内容調査によると、海外投資家は1,270億円の売り越し(前週は44億円の売り越し)となる一方、個人は2週連続で買い越しとなっていた。
あくまでもネット投資額であるため一概には言い難いが、あえて端的に表現するならば、海外勢が安く仕込んでおいた株式を5月下旬に大量に売却した。 残念ながら、国内勢は個人投資家を中心に、株価が安い時期に積極的に売却を進め、急騰してしまってから「ユーフォリア的に」高値掴みをしてしまったと言えるだろう。
「麦わら帽子は、冬に買え」。
これは古くから伝わる相場の格言であり、先人の知恵でもある。
言うは易く行うは難し、ではあるが・・・、
だから、他人と違うことをする勇気を持ちなさいという教えでもあるだ。
巷では、一定の資産家・投資家にしかその効果が及ばない等とも囁かれるアベノミクスであるが、このままでは一定の資産家・投資家が海外勢に限られてしまいかねない。
それは、現政権にとっても、決して本望ではなかろう。
≪ ご参考 ≫
全国5証券取引所 「株主分布状況調査(平成24年度分)」 結果
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