2013. 5.22 Wednesday
≪我が国貿易構造の変化と脆弱性≫
財務省は22日、4月の貿易統計速報(通関ベース)を発表。 貿易収支は8,799億円の赤字となった。 赤字は10カ月連続で、4月としては過去最大。
輸出数量の減少幅縮小など円安のプラス面も出たが、負の影響が先行してしまっている。
因みに、10カ月連続の赤字は第2次オイルショックで原油価格が高騰した1979年7月~80年8 月以来の長さ。 原子力発電の代替エネルギーとして需要が高止まりしている液化天然ガス(LNG)が前年同月比18%増となったが、それを裏付ける様に、中東との貿易収支は1兆1,452億円の赤字で、地域別では最大規模。
尚、対欧州連合(EU)も385億円の赤字と4月としては初めて赤字となった。
ドイツからの自動車や医薬品の輸入が増える一方、輸出は落ち込みが続いたことが主要因。
一方の輸出に関しては、地域別では、自動車や有機化合物が好調だった米国向けが前年同月比15%増の1兆1013億円と4カ月連続のプラス。 リーマンショック直後の2008年10月(1兆2065億円)の水準まで回復した。また、中国向けは同0.3%増と3カ月ぶりに増加。
さて、内閣府は、16日に今年1-3月期の実質国内総生産(GDP)速報値を発表したが、個人消費が好調だったことに加え、輸出が増加に転じたことから前期比年率で3.5%増と2期連続のプラス成長であった。
ただし、民間設備投資は実質マイナス0.7%と、10~12月期のマイナス1.5%ほどではないが、5期連続のマイナスとなり低調であった。
政権交代後の所謂「アベノミクス」への期待感等から円安が進行したわけであるが、確かにその恩恵は、「金額ベース」での輸出に顕著に現われてきているようだ。
しかし、「数量ベース」で依然マイナス値を記録していることは、我が国の将来の国力、即ち『稼ぐ力』を考える上では問題無しとしない。
前述のGDPにおける設備投資をみると、産業機械への投資が減っていることが分かる。 企業が自社の工場などへの投資を手控えているのだ。 減少幅の縮小に貢献したのは企業が購入するトラック等や建設関係の投資であり、これは復興需要に支えられた側面が大きい。
それでは当然に、輸出依存型産業の特に「裾野ゾーン」では、新規雇用の創出や賃金引き上げへのインパクトは緩慢なままだ。
第3の矢である成長戦略に関しては、第2弾までが公表され、残す最後の弾は来月にもリリースされる予定である。
上述した我が国の貿易構造の変化と脆弱性を補完してあり余る程の「真の骨太」の諸施策が打ち出されることを期待する。
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≪ ご参考 ≫
財務省 「貿易統計」
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