2013. 5. 1 Wednesday
≪「アベノミクス便乗詐欺」が横行の模様 ≫
国民生活センターによると、安倍晋三首相の経済対策「アベノミクス」を引き合いに言葉巧みに詐欺まがいの投資などを持ちかけられるケースが各地で確認されていることが分かった。
「今後増える恐れがある」と注意するよう呼びかけられている。
幾つか、事例を挙げておこう。
1.
CO2排出権取引
「政権が代わり、これから景気が良くなるのでCO2(二酸化炭素)の排出量も多くなる。」 東海地方の60代の男性に電話があった。 CO2の排出権取引も増えて儲かるので投資しないかと勧誘され、3日後、自宅を訪れた人物に現金100万円を手渡した。
5日後、インターネットで同様の被害事例があることを知って「だまされた」と思い、電話で業者に返金を求めたという。
業者側が返金に応じたかどうかは不明。
2.
高利回り債券取引
「政権が代わり国土の改革が行われる。 年率9.9%の債券に出資しないか。
県内200人の年金受給者に書類を送っている」と、東海地方の70代の主婦に、証券会社の社員を名乗る人物は話したという。
賢明にも、この主婦は、最寄りの消費生活センターに相談、騙されずに済んだ。
3.
プラチナ先物取引
自営業の50代の男性に電話があり、プラチナの先物取引に投資するよう勧誘された。
関係者が訪問してきて説明し、男性は400万円入金した。
その後、業者から「新政権の経済対策で円安になり、値上がりしそう。 取引は1,000万円に増やした方がいい」と持ちかけられ、さらに600万円を振り込んだ。
その後、送られてきた明細で680万円の損失が出ていることが判明したという。
恐らく、近日中に再度電話があり、「この損失を取り戻すためにも、新たに500万円を追加投資した方がいい。」等と、取引継続を強く勧められることであろう。
さて、改めて述べるまでもないが、「アベノミクスの3本の矢」は、(1)大胆な金融緩和 (2)機動的な財政政策
(3)民間投資を喚起する成長戦略、から構成されている。
(1) は、先の「異次元緩和」が実行された。
(2) は、公共事業等に財政資金を投入、雇用者増、景気浮揚を目指すもの。
そして、(3)については・・・、
菅義偉官房長官は3月16日午後、千葉県柏市で街頭演説し、安倍晋三首相が環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を正式表明したことについて「日本経済を押し上げることのできる『3本目の矢』が高く打ち出された。 農業関係者の心配はあるが、守るべき点はしっかり守り、日本経済を再生させる」と述べ、TPPを通じて経済成長を目指す考えを強調した。
同時に、甘利明TPP担当相・経済再生担当相は、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に伴う経済効果の試算を公表、「関税撤廃した場合の経済効果についての政府統一試算」に従うと、実質GDPは、3.2兆円増加するという。
しかし、この3.2兆円は、実質GDPの僅か「0.66%」に過ぎないのである。
尚、安倍首相は4月19日、日本記者クラブで「成長戦略スピーチ」を行った。
骨子は、概ね、以下の通り。
● 成長戦略の3つのキーワード
・「挑戦:チャレンジ」
・「海外展開:オープン」
・「創造:イノベーション」
●「健康長寿社会」から創造される成長産業
「規制・制度改革」再生医療・創薬が1つの鍵
「日本版NIH:国立衛生研究所」
医療研究開発の司令塔を創設し、難病対策を加速
● 全員参加の成長戦略
「失業なき労働移動」
労働移動支援。財成金の大幅増。トライアル雇用制度の拡充。
● 世界に勝てる若者
「公務員試験に生きた英語を必須化」
「就職活動を後ろ倒し」
3年生の3月(春休み)から広報活動開始、
留学生が帰国した8月から採用選考活動。
● 女性が輝く日本(成長戦略の中核は「女性の活躍」)
「役員に1人は女性を登用」
「待機児童解消加速化プラン」
横浜方式の全国横展開。今後2年間で20万人分の保育の受け皿を整備。
さらに2017年度末までに20万人増を図り、待機児童ゼロを目指す。
「3年間抱っこし放題での職場復帰支援」
3年育休の推進を経済3団体に要請。助成金や「学び直し」プログラムも。
「子育て後の再就職・起業支援」
若干「ひ弱の感」は否めない。
もっとも、報道によれば、首相は参院選までに少なくともあと2回は新たな成長戦略を打ち出す考えであるとのこと。
成長戦略 第2弾、第3弾に期待するより他はなかろう。
ところで、日本商工会議所は、4月30日、4月の商工会議所LOBO(早期景気観測)調査結果を公表した。 「業況DI」は、4カ月連続で改善するも、仕入価格上昇が懸念される状況だ。
LOBO調査は、商工会議所のネットワークを活用して、各地域の「肌で感じる足元の景気感」を全国ベースで毎月調査し、その集計結果をリアルタイムで調査実施会議所等へ提供することにより、商工会議所としての景気対策等に関する意見活動などに資することを目的とするもの。
調査対象数(平成24年3月現在)は、415の商工会議所の協力により、2,820企業を対象とし、原則として毎月17~23日に調査を実施、原則として調査月の最終営業日に結果を公表している。
昨年終盤の政権交代後、「アベノミクス」への期待感等から、株高(日経平均株価で約50%)及び円安(対米ドルで約22%、対ユーロで約25%)が進展、金融市場は所謂「ITバブル」以来、約10年振り、或いはそれを超える程の活況を呈している。
一方、LOBO調査では、企業経営者が慎重なスタンスを払拭し切れない姿を垣間見ることができる。
巷では、「アベノミクス」は、「持つ者と、持たざる者」との経済格差を一層拡大させてしまう等とする懸念の声が上がっているのも事実で、「アベノミクス」の恩恵が現・経済的弱者にも広範に及ぶことを期待したい。
冒頭の様な「便乗詐欺行為」が撲滅されるためにも・・・。
( Image Photo )
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≪ ご参考 ≫
日本商工会議所 「LOBO(早期景気観測)調査結果」
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