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2013. 2. 3 Sunday

「国際先端テスト」って何 ?

グローバル・レベルで活躍できる人材発掘のための国家試験??? 

安倍首相は31日、参院本会議の代表質問で、企業活動の妨げになる規制などを国際比較したうえで見直す「国際先端テスト」の導入に前向きな姿勢を示した。

 

首相は「投資先としての日本の魅力を最高水準に引き上げる観点から国際比較したうえでの規制改革などを含め国際先端テストの導入に向けた取り組みも進めることとしている」と語った。 自民党の中曽根弘文氏への答弁。

 

この「国際先端テスト」なるフレーズは、自民党の政権公約Action1経済再生の「大胆な規制緩和」に登場する。

 

原文を引用すると・・・。

「企業の活動のしやすさを世界最先端にするための国際先端テスト(企業の活動を妨げる制度的障害を国際比較した上で撤廃する基準)を導入します。」

 

すでに政府は規制改革会議を立ち上げ、重点分野として雇用やエネルギー・環境、健康・医療を挙げ、首相は「国民のニーズに応えると共に、国富拡大につながるように省庁横断的な規制改革を積極的に推進する」と述べている。

 


また、甘利内閣府特命担当大臣(経済財政政策)は、以下の様に意気込む。

「日本従来の貿易立国と同時に産業投資立国という双発型のエンジンを持つ産業国家を目指す。 必要なのは、双発型エンジンのシナジーを最大限に発揮させる仕組みだ。 海外で投資したお金が日本に戻って来やすい仕掛けをつくり、戻ってきたお金が日本の競争力強化に資するような利用法を考えていく。」

 

「ここで日本が目指すべき役割は、新たな付加価値を生み出す価値創造センターだ。 新たな製品、新たなサービス、新たなシステムなどを発明するクリエイティブ・センターとして、戻ってきたお金を的確に新たに価値を生み出す技術開発力産業へと配分していく。」

 

「日本が研究開発やそれにかかわる設備投資を行うのに大変有利な国だと世界に認識されれば、海外の優秀な企業も日本に来てくれるようになる。 特にクリエイティブ関係の外国企業が日本に来てくれることは大歓迎だ。 そういった部分の環境を整えるためにも、理不尽に残っている規制を取り払い世界最先端の制度にしていくことを目指して『国際先端テスト』の導入も進めている。 円が高かろうと安かろうと、価値のあるものは輸出できる。」


「研究開発部門とマザー工場は日本に置き、完全に組み立て型になるまでの間は国内から輸出し、他国が技術をキャッチアップしてきたら、アドバンテージのある時点でモジュール化して海外の生産拠点に移す。 そして、そこで稼いだ利益は国内に還流し、新たな価値創造に向かう。 貿易立国エンジンと産業投資立国エンジンが隔離して存在するのではなく、シナジー効果を最大限に発揮できるような制度を確立していく。」

 


なんとも「国家ビジョン」としては(絵に描いた様な)素晴らしい内容なので、是非実現させて頂きたいとは思う。

 

因みに、この新手法は、日本と海外の制度を比較した上で、日本独自の規制が合理的にその必要性を説明できない場合、3年以内に国際基準に合わせることを求める内容である模様。

 



では、現在日本は「企業活動のし易さ」では国際対比でみれば、いったいどの辺りに位置しているのだろうか・・・?

 

先月、米国保守系シンクタンク、ヘリテージ財団(Heritage Foundation)とThe Wall Street Journalは共同で、世界各国の経済システムの自由度を計る「経済自由度指数(Index of Economic Freedom)」(2013年版)を発表した。

 

同指数は、1995年に発表されて以来、毎年公表されているが、1位には19年連続で香港が選ばれた。  

 

レポートは香港について、下記の評価を付している。

「効率的かつ透明な法的枠組みと相俟って、香港の競争力の高い規制制度は、世界的な貿易と投資の活気に満ちた取り組みを支えている。 意欲と熟練した労働力は、ダイナミックな経済のための強さの基礎となっている。 」

 

因みに、2位は、同じく19年連続となったシンガポール。

 



( 出所 :
Heritage Foundation HP. こちら をクリックして、日本の現況を確認 ! )



我が国は、昨年比でスコア自体はやや上昇したものの、ランキングでは2つ順位を落し24位であった。

 

主に足を引っ張った項目は、「Limited Government (小さな政府)」で、特に「Government Spending(政府の支出)」の数値の低さが目に止まる。

 

また、「Open Markets (市場の開放)」の内、「Investment Freedom(投資の自由)」、「Financial Freedom (金融の自由)」は、依然低位安定している。

 

これらについて、レポートは次の通り指摘する。

「低金利維持を目的とした金融政策は、日本の巨額の債務負担上の緊急性懸念を軽減してはいるが、それはまた、財政改革を実施するための政治的な動機をも制限してしまっている。」

「金融セクターは、近代的でよく発達してはいるが、政治的な干渉を受け続けている。」

 

日本の現状が概ね端的に指摘されていると考えられるものの、項目自体がやや大括りであるため、「国際先端テスト」への活用との観点では、抽象的過ぎる嫌いもある。

 



そこで、今度は、世界経済フォーラム(WEF World Economic Forum)が、年に一度、世界各国の国際競争力を分析し評価・格付けする「国際競争力指数(Global Competitiveness Index)」(2012年版)をみてみることにする。



( 出所 : World Economic Forum HP. こちら をクリックして、日本の現況を確認 ! )


Index of Economic Freedom (経済自由度指数)と同様に、スコアそのものは横這いながらも、順位は下落傾向にあるようだ。

 

Basic requirements(基本事項)では、「Macroeconomic environment (マクロ経済の環境)」が124位へと一段と低下し、足枷となっていることが見て取れる。

 

尚、マクロ経済の環境の内、「政府の収支均衡予算」は144ヶ国中143位、「政府債務」では144位と去年に続き世界最下位と評価されていた。

 

Efficiency enhancers(効率性促進要因)は、11位で横這いではあるが、内訳をみると、Labor market efficiency(労働市場の効率性)、Financial market development(金融市場の発展度)など多くの項目で順位を下げている。

 

Technological readiness(科学技術の対応力)のみ順位を上げたものの、基本的にはMarket size(市場規模)に大きく依存して、効率性促進要因がまずまずの位置を保つことができていると言えよう。

 

Innovation and sophistication factors(革新性と洗練性要因)の評価は高い。 中でも、Business sophistication(ビジネスの洗練度)は、1位を誇り続けている。

 

 

因みに、高評価された項目と低評価された項目の詳しい情報は以下の通り。

「ビジネスの洗練度」
・地元供給業者の量(Local supplier quantity)....................1位
・地元供給業者の質(Local supplier quality).....................3位
・クラスター開発の状況(State of cluster development)...........5位
・競争優位性(Nature of competitive advantage)..................2位
・バリュー・チェーン(価値連鎖)の広がり(Value chain breadth)...2位
・国際物流の統制(Control of international distribution)........1位
・製造工程の洗練度(Production process sophistication)..........1位
・マーケティングの程度 (Extent of marketing)...................10位
・権限委任の意欲度(Willingness to delegate authority)..........25位

「マクロ経済の環境」
・政府の収支均衡予算(対GDP比)(Government budget balance)....143位
・国民総貯蓄(対GDP比)(Gross national savings)................60位

・インフレーション(Inflation)..................................51位
・政府債務(対GDP比)(General government debt)................144位
・国家の信用格付け(Country credit rating)......................19位

 

 

さて、「国際先端テスト」とは、「企業活動を妨げる制度的障害を国際比較した上で撤廃する基準」であることは冒頭で述べた通りで、尚、「制度的障害」とはこれまでの時代背景を都度反映した上で編み込まれた複雑怪奇な『規制の網』のことである。

 

その規制そのものの数はいか程に及んでいるのだろうか・・・?
「国際競争力指数(Global Competitiveness Index)」(2012年版)ですら、計110を超える変数(variable)を用い各国の国際競争力を評価し数値化しているのだから、恐らく10乗程にはなるのではないか。

 


全ての規制について3年以内に国際基準に合わせることは到底無理であろうが、国家の成長戦略推進に資する主だった規制だけでも可及的早期に取り組んで頂きたいものだ。

 

と同時に、可能な限りシンプルな体系とすることで、これまで各々の規制を一つひとつクリアーして行くのに要した時間、手間、コスト等の特に重複した多重負担が軽減されるであろうことは大きな前進(メリット)に繋がると言えよう。



そこで、「国際先端テスト」を駆使した規制緩和が図られるにあたり、以下の3点を提言しておきたい。

 

先ずは、現状の規制そのものについて、インターネット等を活用すれば国民が容易にその仕組みを理解できる様な開示方法を進めて欲しい。 そして、改革の明確な方向性と目指すべき終局点を示すと共に、改革による具体的なメリットを「見える化」させること。

 

当然、国民もSNS等を通じて適宜意見要望等を持ち込み議論の輪が広がると同時に密度が濃くなって行く等といった仕組み作りも不可欠であろう。

 

この様にすることで、そのメリット・ディメリットもよく分からないままに、TPPに賛成するのか否か等の決断を突如迫られる等という事態は回避されよう。

 


次に、各省庁等の行政機関が「既得権益の殻を一旦全て脱ぎ捨て」真摯な議論を進めて行って頂きたい。 各種の規制と既得権益との間には、密接な相関関係が内在していることは自明の理だからである。

 

また、それには各行政機関同士の相互理解とバランス感覚も同時に求められる。 各機関が最終決定権限を得ようと各々が個別に規制の網の目を解きほぐし自らに有利な裁定フローを構築せんがための競争が展開されれば、必ずや「合成の誤謬のワナ」に陥ってしまう危険性が高まるからである。

 


そして最後に、国民一人ひとりがこの改革議論に積極的に参加して行くことである。


「お上」の言う通りにさえ行動していれば全てが上手く回って行く等といった時代はとうの昔に終わりを告げている。

 

国力を図るモノサシを一言で表現することは簡単ではないが、政治力・経済力・軍事力及び社会情勢の効率的で高密度の結晶体こそがそれを表現し得るものと言えるであろう。

 

その実現のためには、国民一人ひとりの国政や国策への参画意識の高まりは必要不可欠な要素であり、「失われた20年」を克服し再び輝ける日本を取り戻すための施策の一つとして「国際先端テスト」を用いた規制改革(緩和)が推進されるのであれば、同時に自らの人生がより充実したものとなるよう、この機会を逃すべきではない。

 


まだこの議論は緒についたばかりである。
国が試金石として「国際先端テスト」を用いるのであれば、私たちもそれを同時に上手く活用しようではないか。




≪ ご参考 ≫
ヘリテージ財団(Heritage Foundation) HP
世界経済フォーラム(WEF World Economic Forum) HP



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