2012. 5. 7 Monday
≪ 今年度から、通期業績予想は「レンジ形式」にて開示します! ≫
GWが開け、3月期決算企業の決算発表がピークを迎えています。 そこで、同時に公表されることの多い新年度業績予想に、今年は『興味深い変化』が見られ始めました。
売上高や経常利益をレンジ形式にて表記したり、当期純利益のみの開示に留めているケース等が散見されるのです。 何故か・・・。
東京証券取引所は、去る3月21日「業績予想開示に関する実務上の取扱いの見直し内容について(、2012年4月5日に一部追記)」として、実務上の取扱いの見直し内容を公表しています。
その中で東証は、決算短信での会社予想の記載を柔軟化し、第2四半期累計と通期の売上高、営業利益、経常利益、純利益、1株当たり純益の予想を書く従来型の「表形式」に加えて、1株当り当期純利益のみを表記する等の『自由記載形式』を認めることとしたのです。
また、これまでは会社予想非開示の場合、その理由の明記が求められていましたが、今後は省略も可能となっています。 一方で、内部的に計画がある場合は開示すべきとしており、会社予想が経営のコミットメントではない場合、そのことは明記することが要求されています。
東証における業績予想開示の見直しのベースとなっている考え方は、以下の通り(「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書(日本証券経済研究所)」概要より抜粋)。
「1. 通期の決算発表時に売上高・利益等の所定の項目について特定の値による開示を行うという原則的な取扱いにこだわり過ぎると、合理的とは言えない業績予想の開示が行われたり、上場会社に必要以上の負担をかけたりするおそれが高い。」
「2. そこで、経営者自身の合理的な評価や見通し等に基づいて、経営成果に係る直接的な予想が示される規格化された開示の有用性を確認しつつ、上場会社各社の実情に応じて、多様な方法による柔軟な開示を積極的に行い得るようにすることが望まれる。」
では、「自由記載形式」のサンプルを見てみることとします。
( こちら をクリックして、ご覧ください。 )
実に様々ですが、東証は「上場会社各社におけるご検討に際しては、あくまでも自社の実情に即してご判断ください。」等として、保険を掛けることを忘れてはいません。
加えて更に、同取引所は、「その他の実務上の留意点等」として『投資者との積極的な対話の推奨』を掲げ、以下の注意喚起を行っています。
「次期の業績予想の開示内容の変更を行う場合や次期の業績予想とは異なる形式で将来予測情報の開示を行う場合には、比較可能性の低下など投資者における利便性に影響が生ずることが想定されます。」
そこで、
「例えば、設備投資計画やそれに伴う減価償却負担の変動見込み、事業環境に係る見通し(前提条件)や前提条件の変動による業績の感応度など、投資者における投資判断に有用な将来予測情報の開示の継続及び一層の充実のほか、次期の業績予想を含む将来予測情報の開示全般に関する自社の考え方を提示する。」
等を行い、
「投資者との積極的なコミュニケーションの実践を通じて、安易な情報開示の後退との批判を招くことのないよう特にご留意ください。」
これでは何の為の「業績予想開示の柔軟化」かよく分かりませんが、水面下では「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会」のもう一方のオブザーバーとして柔軟化に積極姿勢で臨んでいた金融庁との確執があったことが原因等と囁かれています。
従って、最終的には、「表形式と自由形式の併存(任意選択)」で着地した模様です。
さて、7日(月)の日経平均株価は、外的要因が重なったこともあり今年最大の下落幅(261円11銭 : 2.78%)を記録してしまいました。
「業績予想開示の柔軟化」はまだ緒に就いたばかりですから、現時点でその功罪について云々言うことは時期尚早でしょうが、投資家目線に立てば、自由形式が会社サイドの都度の理由で都合よく使われてしまうことだけは避けて頂きたいものです。
≪ ご参考 ≫
上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書
(公益財団法人日本証券経済研究所)
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