2011. 9. 16 Friday
≪「返済猶予」利用後の倒産・・・前年同期比3.5倍≫
東京商工リサーチによると、「中小企業金融円滑化法に基づく返済猶予を利用したにもかかわらず、倒産に至るケースが7月、8月と急増し、今年は8月までの累計件数が前年同期より3.5倍も増えた。」とのこと。 応急的な資金手当てで一時的に資金繰りを緩和させても抜本的な解決には至れないことを示しています。
更に、同社は「返済猶予利用後の倒産件数は、9月もすでに6件発生し9月14日現在で累計90件に達した。 また負債総額は、前年同期比286.6%増の656億8,800万円にのぼった。これは負債10億円以上の大型倒産が14件(前年同期5件)と約3倍に増えたことによる。」としています。
(出所: 東京商工リサーチ) ⇒ 拡大図はこちらをクリック。
さて、この法律は、中小企業者や住宅資金借入者に対する金融の円滑化を図るため、臨時国会(第173回国会)において、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」(以下、「中小企業金融円滑化法」という)として制定され、平成21年12月4日に施行されました。
年末を前にして法案の強行採決に至った背景には、長引く不況の影響から、年末の資金調達が困難な状況と予想され、中小企業への貸し渋り・貸し剥がしを抑制することを目的としていました。当初の構想では「強制的に借金返済を猶予する」という内容でしたが、企業からの貸し付け条件変更の申し出に対して、金融機関が可能な限り応じるように要請する「努力規定」に近い形に落ち着いたのです。
ところで、「円滑化法に基づく返済猶予を利用した企業で、東日本大震災による取引先の被災や資材・商品不足、消費自粛による売上減少などが影響した震災関連倒産は17件(3月ゼロ件、4月1件、5月1件、6月1件、7月5件、8月9件)」と記載されています。
震災の影響が業績回復の足かせとなったことがうかがえるわけですが、それまでに持続されてきた一方的な円高の進行と7月中旬に1ドル80円を割り込んだあと77円近辺で定着してしまった為替動向にも大きな影響を受けていると認識せざるを得ません。
また、改めて触れるまでもありませんが、原発事故のもたらした風評等による被害や計画停電等への対処策として進められた生産調整等にも起因していると言えます。
「中小企業金融円滑化法」施行当時、活用により得られるメリットとして、以下が挙げられていました。
・元本返済猶予や、返済期間の延長等の借入条件の変更。
・条件変更を行っても不良債権とみなされないため新規借入が可能。
・金融機関による経営支援・営業支援コンサルティングを受けられる。
額面通りに取れば、「ありがたい。」との印象があるかもしれません。
しかし、2009年6月に実施された「中小企業に関するアンケート調査結果の概要」(金融庁)によると、「資金繰り悪化」の最大の要因は「販売不振・在庫の長期化等、営業要因」(69.4%)と突出しており、「融資審査、金融機関の融資態度」(11.4%)や「融資期間、返済条件等、金融機関の返済条件」(8.6%)を大きく引き離していました。
もともと、『ミスマッチ』が生じていたのです。
『デフレ・ギャップ』に苦慮しているにもかかわらず、資金繰り対策と称して借金漬けの状態を存置したまま、更なるデフレ進行の中、追加借入が促されてしまっていたのです。
国家全体が浸ってしまっている『デフレ・ギャップ』に一金融機関が対処できるわけはなく、実質的に「資金回収を目論んだ観点」から、経営等の支援(?)が行われたことは想像に難くありません。
平成21年12月4日、同法施行に際し、亀井静香・金融担当大臣(当時)は次の様に語っています。
「中小・零細企業の皆様におかれても、金融機関とも協力しつつ、積極的に業務の見直しや経営の改善に取り組むなど自助努力を行っていくことが重要であることにご留意頂きたい。」・・・なんとコメントすれば良いのやら・・・。
さて、野田佳彦首相は本日午前の参院本会議で、円高と新興国の追い上げにより日本経済は「空前の空洞化の危機にある」とし、「日銀と連携し、あらゆる施策が必要」と指摘しています。
是非、『デフレ・ギャップ』の解消に向け、大胆且つ迅速に行動して頂きたいと願っています。
単に「点滴のチューブの本数や液量を増やす」だけで、ツケを先送りする様な小手先の手段は排除されてほしいものです。
そのような中、喫緊の課題として、資金繰りに対処する必要がある会社も少なからず存在しています。
取引金融機関等からは、「経営改善計画書」の作成・更新を求められることと思われます。
効果的な「経営改善計画書」の策定には、以下の諸点を盛り込むことが必須です。
・自社の現状を認識する →業績悪化の主たる要因は何か。
・事業内容、財務、収益の3分野から重要点をまとめる →金融機関の資産査定用。
・経営環境の変化を予測する →他社動向、金融経済動向の認識度合。
・具体的な行動計画を策定する →全改善項目にて、細分化と責任者の任命等。
・キャッシュフローを確認する →償還財源余力の認識。
・経営管理を徹底する →「計画(Plan)、実行(Do)、検証(Check)、対策(Action)」の再策定。
また、「これまでの経営をどのように改め、利益を出し、社会に還元していくか」を、経営者の強い意志を伝えるためも、自らが作成することが重要です。
一方で、時代は今や「代表取締役が、社内で最も忙しい」環境へと変化を遂げました。
精神的にも体力的にも極限ギリギリのところで奮闘しておられることと思います。
行き詰ってしまう前に、どうぞご相談ください。
常に経営者の皆様の脇につき、経営計画書の策定から金融機関との交渉を有利に進める等のお手伝いをさせて頂きます。
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下記メールにて、お気軽にご相談ください。
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〈ご参考〉
東京商工リサーチ HP
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