2012. 7. 22 Sunday
≪ 国外財産調査制度」・・・初回は、平成25年12月31日時点 ≫
国税庁は、平成24年度税制改正で創設された「国外財産調書制度」についてチラシを作成、公表しました。 最初の調書は、平成25年12月31日における国外財産の保有状況を記載し、翌年3月17日までの提出が義務付けられています。
同庁は・・・、
1.「国外財産に係る所得や相続財産の申告漏れについては、近年増加傾向にあり、国外財産に関する課税の適正化は喫緊の課題。」
2.「国外財産の把握体制が十分でない中、内国税の適正な課税及び徴収に資するため、一定額(5,000万円)を超える国外財産を保有する個人(居住者)に対し、その保有する国外財産に係る調書の提出を求める制度を創設した。」
等としています。
さて、1.に関してですが・・・、
国税庁資料「海外資産関連事案に係る調査事績の推移」(←クリックで、開きます) に依ると、平成18事務年度に62件であった「海外資産に係る申告漏れ等の非違件数」は、平成22事務年度には2倍弱に増加しています。
しかし、その数は116件。
これを多いと捉えるか少ないと捉えるかは、主観的要素が大きいと思われますが、個人的には特段大きな数字とは思えません。
因みに、同年度の「非違1件当りの申告漏れ課税価格」は5,047万円(59億円÷116件)となっており、5,000万円超が当該一定金額とされたことの根拠のひとつになっているものと考えられます。
次に、2.についてですが、「内国税の適正な課税及び徴収に資するため」とのフレーズが、あまりに意味深です。
言い換えれば、国外財産を5,000万円超も保有する個人(居住者)は、まず間違いなくその何倍もの財産を国内にも保有しており、厳しい国家財政立て直しの一環として今後徴収を強化して行く必要がある。
そこで、この調書を十二分に活用させて頂く、となるでしょう。
では、こちら をクリックして、当該パンフレットご覧ください。
この中には、さほど負担を感じることもなくサラサラサラと記入できてしまう様な『実に巧みな』仕様で、「国外財産調書様式(イメージ)」が掲載されています。
しかし、所定の様式では、財産区分欄に、1)土地、2)建物、3)山林、4)現金、5)預貯金、6)有価証券、7)貸付金、8)未収入金(受取手形を含む)、9)書画骨董及び美術工芸品、10)貴金属類、等々その他の財産も含め個別に区分けして漏れなく記入することが要求されます。
また、用途欄には、一般用(事業又は業務以外の用)か事業用かの別を記入する必要があり、例えば、預貯金の場合、種類別(当座預金、普通預金、定期預金等の別)、用途別及び所在別の価額を、有価証券の場合は、種類別(株式、公社債、投資信託、特定受益証券発行信託、貸付信託等の別及び銘柄の別)、用途別及び所在別の数量及び価額を細かく記載する必要があります。
同様に、貴金属類の場合、種類別(金、白金、ダイヤモンド等の別)、用途別及び所在別の数量及び価額を、その他の財産としては、種類別(預託金、株式を無償又は有利な価額で取得することができる権利、信託に関する権利等の適宜に設けた区分)、用途別及び所在別の数量及び価額等です。
まさに、「身包み剥がされる」といった印象です。
そこには、財産所有者の財産形成の背景や嗜好などを分析するには十分過ぎる情報が凝縮されています。 そして、それらを足掛かりに国内財産の正確な把握へと着実に歩を進めて行く。
実に上手くできた仕組みです。
さて、この制度で言うところの「国外財産」とは、「国外にある財産をいう」とされ、「国外にある」かどうかの判定については、財産の種類ごとに行い、その財産自体の所在、その財産の受入れをした営業所又は事業所の所在、その財産の発行者等の所在などによることとされています。
(例)
・「動産又は不動産」: その動産又は不動産の所在
・「預貯金等」: その預金、貯金又は積金の受入れをした営業所又は事業所の所在 ・「社債又は株式」:その社債又は株式の発行法人の本店又は主たる事務所の所在
2008年のリーマンショック以降、欧米系の金融機関中心に自己資本増強を目的として優先出資証券等が大量に発行され、リスクプレミアムの裏返しであるところのクーポンレートは大変魅力的な水準に設定されていました。
その様な金融商品に、個人投資家も含めジャパンマネーが群がったことは言うまでもありません。
また、東日本大震災と関連して発生した原発事故の後、一部の外資系金融機関の積極的な営業努力も相俟って、本邦個人資産家の資金は香港やシンガポール等に流出して行ったのです。
その後、それらの資金が本邦に大きく逆還流した等といった事象は未だ見られていません。
そこで、改めて「国外にある」の定義に目を遣ると、預金等については「受入れをした営業所」等、社債・株式等については「発行法人の本店」等となっていることから、本制度がストレートに適用されることが分かります。
投資家の中には、若干頭を抱え込んでいる方が少なからずおられることでしょう。
本制度には、「故意の調書不提出・虚偽記載についての罰則(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)等が当然に規定されていることも理由のひとつです。
では、一部を換金して5,000万円以下に抑え込むことにしようか・・・。
ご自身の財産を正確に「時価で」管理されていますか・・・?
おまけに、リーマンショックと東日本大震災の後は、円高も相当進展してしまっており、含み損を実現損に替えてまで売却されますか・・・?
なら、その財産を担保に同じ通貨で借入(債務)を発生させ、借入金は即時に円転して純資産を圧縮してしまえば良いのでは・・・。
多分、これも徒労に終わってしまうでしょう。
何故ならば、国外にある財産は、負債等の債務を考慮した後の純資産を指すのではなく、あくまでもバランスシート上の「資産の部のみ」を対象としているからなのです。 (尚、借金で不動産を所有していても同様に対象となる)
では、打つ手は何もないのか・・・?
決してそんなことはありません。
大分類で2つ、中分類で各々2つ程、「秘策」があります。
もちろん、合法的に経済合理性を持った対処方法です。
しかし、中分類を更に個別事情を踏まえて細分化して行く場合、当該財産の種類・規模、所有者の知識・経験・家族構成等を確認させて頂く必要がある為、本コラムでご披露させて頂くことは困難です。
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尚、初回適用は、平成25年12月31日時点とされていますが、その時期が差し迫ってからではご依頼等の殺到が予想される為、期待にお応えできかねる場合がございます。
また、脱法・違法行為等には一切加担致しませんので、その旨予めご承知おきください。
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