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2011. 6. 8 Wednesday
≪大幅増税の根拠となる「附則第104条≫

政府税制調査会は、7日の全体会合で「税と社会保障の一体改革」に伴う増税論議に着手、政府は与党との合意を経て、20日を目処に消費税増税の道筋なども含めた一体改革の最終案を取り纏める方針を確認しました。 閣議後の記者会見で、与謝野経財相は税調の議題について、「所得税法の附則104条全体だ」と指摘し、所得税の最高税率引き上げや相続税の課税範囲拡大等が益々現実味を帯びてきています。


与党内には、「増税ありき」の社会保障改革論議と反発の声があるものの、野田財務相は7日夕の政府税調のあいさつで「安心できる社会には、社会保障強化と財政再建の同時達成が不可欠だ」として、増税による社会保障の強化に強い意欲を示しています。

 

「附則第104条」、即ち「所得税法等の一部を改正する法律(平成二十一年法律第十三号)附則第百四条」は、そもそも「麻生政権」が2009年の総選挙に向けて提示した、「自公政権の政策公約」で、2011年度中に消費税増税を含む税制抜本改革に必要な措置を取ることを定めたものです。

 

これに対して鳩山民主党(当時)は、増税の前に官僚利権を切ることが先決であるとして、衆議院任期中の消費税増税を完全否定して20098月総選挙を戦いました。 言うまでもなく、民主党が大勝。 この時点で、「附則104条」は実質的に効力を失ったとの見方も存在していました。

 

が、菅直人氏は、20107月参院選に際して、突然消費税大増税を再び公約として取り出し、民主党内で協議もせずに、独断専行で消費税大増税公約を提示したのです。  無論、参院選で菅直人民主党は惨敗してしまいました。

 

主権者国民の意思によって明確に否定された消費増税ですが、菅-野田-与謝野-藤井各氏の面々は、「所得税法附則104条に定めがあり、日本は法治国家だから、この法律の条文を遵守する方針だ」等として、恐ろしいことに再び蘇ってきているのです。


これらに関しては、「国民の主権は何所にあるのか・・・?」等として議論が継続されていますが、本コラムは、その議論には深入りして行きません。

 


さて、平成23年度税制改正大綱では個人所得課税に関して・・・、

「格差社会に対応するためにも、累進構造を基本とする所得税については、雇用形態や就業構造の変化も踏まえながら、所得再分配機能等を回復するための改革を進める必要があります。そのため、税率構造の見直しはもとより、高所得者に対して結果的に有利になっている所得控除の見直しなどによる課税ベースの拡大、さらには、所得控除から税額控除・給付付き税額控除・手当へという改革を進めます。」

との基本的考え方が示されていました。



それらをベースに、「給与所得控除の見直し」、「退職所得課税の見直し」、「成年扶養控除の見直し」等が盛り込まれる一方で、「税率構造の見直し」は先送りされていました。

 


ですが、いよいよ「税率適用所得区分が増設」されると共に、「超過累進税率の引き上げ」が実現される段階に移行しつつある様に思えます。

 

こちらは、財務省が公表している「所得税の税率の推移(イメージ図)」です。
(拡大図はここをクリック)


 昭和5961年分の所得税の税率は、10.5%70.0%までのなんと15段階もあり、住民税と合わせた最高税率は88%に達してしいました。  その後は、高所得者部分の税率適用所得区分の廃止等により最高税率は低下して行きます。

現在の最高税率適用区分は
1,800万円以上(超過累進税率40%)となっており、一方、1,000万円より下の区分については税率の引き下げは小幅であったため、所得税の累進性は緩和されてきたことがうかがえます。



次に、こちらは財務省公表の「主要税目の税収(一般会計分)の推移」です。
(拡大図はここをクリック)

所得税収は、
1990年代以降、減少傾向を辿っており、23年度の予算額である13.5兆円は、ピークを示現した1991年度の26.7兆円のおよそ半分にまで落ち込んでいます。
 

消費税の導入(1995)及び税率引き上げ(1997)に伴って、所得税率が引き下げられてきた経緯にはあるものの、税収額の絶対値でみれば、所得税・消費税合算によるそれも減少傾向に歯止めがかかっていません・・・。


では、今後、所得税に関して、どの様な増税施策が打たれると予想されるのか・・・。


単純に考えれば、往年の姿に戻して行くのだと思われます。

具体的には、最高税率を現行の「1,800万円以上:40%」から、新たに2つほど「税率適用所得区分」を設けて行くことになるでしょう。

 

一例を挙げるならば、1995年当時にならい、先ず「3,000万円以上:50%」区分を設け、同時に若しくは時間をずらして、1988年当時の「5,000万円以上:60%」区分を上乗せすること等が考えられます。

 

仮に第二段階目までを実行した場合、税収増額は約5,400億円程度と推定されます。

 

消費税の税率を1%引き上げることによる税収増は約2.5兆円と見込まれており、その差は歴然としています。



では、何故、所得税の税率構造改変にまで言及しているのか・・・。

一種の「目くらまし戦術」と位置付けることができるでしょう。

 

冒頭で触れましたが、これまで消費税の税率引き上げに関しては、政局を大きく左右させてしまう事態が度々起こってきました。  増してや、今般は段階的とはしているものの事実上、税率の100%Up → 「10%」への引き上げなのですから・・・。

 

ご存じの様に、消費税は逆進性の高い税項目です。 消費税は全ての所得階層に対して同率の税率が課せられますが、一般的に、低所得者層のほうが高所得者層に比べて消費性向が高いため、相対的に低所得者に対する負担が高くなってしまうことが問題視されることもあります。

 

一般的な国民感情を逆なでしないためにも、高所得者への課税強化を実行しようとしていると考えることは決して穿った見方ではないでしょう。

 

が、一方で、国の財政事情が危機的な状況を迎えつつあり、外資系格付け機関は日本国債を格下げの方向で検討を進めています。 その様な中にあっては、具体的な税目が何であれ、「取れるところから確実に取る」といった徴税スタンスが緩まることはなかろうと思われます。

 

ところで、法人税率も然りですが、仮に所得税の最高税率が引き上げられるとするならば、主要先進国対比では、「断トツに高い課税率国」となってしまうことも事実なのです。



〈ご参考〉

財務省 HP

国税庁 HP


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