2011. 5. 27 Friday
≪集中日は6月29日・・・今年の株主総会≫
この日には約700社の開催が予定されています。
東京証券取引所によると、3月期決算会社の集中率最高値は平成7年に記録した96.2%。 近年では次第に分散化が進み、昨年の集中率は42.6%と3年連続して50%を割っています。 ひと頃、「物言う株主の台頭と株主提案権の行使」や「買収防衛策導入の是非」等が話題になりましたが、茲許、マスコミ等で採り上げられることはめっきり少なくなりました。
「物言う株主」の代表格といえば、スティール・パートナーズ等のアクティビストで、「株主価値の向上」といった株主の立場からの正論と、豊富な資金力を背景に、経営陣により一層の株主価値の向上施策(配当の引上げ等)を提案してきていました。
活発な動きを見せた外資系ファンドなど一部株主の動きに触発され、これまで株主総会では経営者寄りの姿勢を見せていた本邦大手投資家である企業年金連合会は、株主価値向上に関わる議案についての議決権行使基を2003年に策定すると共に、議決権行使結果の詳細を継続して公表する様になりました。
こちら は、企業年金連合会の「6月株主総会インハウス株主議決権行使結果」について2004年からの「議案別・反対等比率」推移です。
その特徴等を挙げてみると・・・。
・2004-2005年には総じて各議案に対して反対票等が数多く投じられていたものの、一部の議案を除いて、2007以降はその割合は大きく低下してきています。
・比較的高い反対等比率が保たれている議案としては、「取締役選任」「退職慰労金支給」を挙げることができます。
・近年その比率を高めつつある議案が「役員報酬額改定」です。
・買収防衛策に関する議案は、過去からの連続性を尊重し「その他会社提案」に組み込んでいますが、同連合会公表の独立した数値としては、基準の改定を行った2008年には38.1%、2009年が20.0%となっています。
(「企業買収防衛策に対する株主議決権行使基準」は2010年11月に廃止されました)
若干補足すると、取締役選任議案については、同連合会の「業績等基準(含、かつてのROE基準)」の存在が下方硬直性を強めているものと推定されます。
退職慰労金支給議案については、制度そのものを廃止する企業は増えつつあるものの、長期業績不振や経営責任が問われるべきと判断されるケースでも退職慰労金の支給が行われる企業がそこそこ存在し続けているためと思われます。
また、退職慰労金に替えストックオプション枠を設定する等の役員報酬額改定議案に関しては、監査役への給付が含まれている事例には反対票が投じられている模様です。
さて、今年の株主総会を展望してみると、偶発的に生じた東日本大震災という特異な事情が根底にあるため、一部の例外を除き、概ね従来以上に無難な総会運営となることが予想されます。
一部の例外とは、当該企業において法令違反や反社会的行為等の不祥事が生じ経営上重大な影響が出ているケースや、BCP(事業継続計画)の策定が未整備であったこと等から大震災によって企業価値を著しく毀損させた等のケースが考えられます。
また、故意或いは重過失等によってその企業の活動が国民生活に甚大な悪影響を及ぼした場合や及ぼしているにもかかわらず、状況等について適切な説明責任を果たしていない企業等を挙げることができるでしょう。
あえて典型的な事例を記載するならば、国民の利便性よりも旧行の権益保持を優先させたことに起因する大規模なシステム障害を引き起こした金融グループや「一時中断された海水注入について、実は注入を継続していた」等として、人災発生から2ケ月以上が経過したにもかかわらず一連の言動が国民に不信感を抱かせ続けるばかりの電力会社です。
この日本を代表する巨大企業には大きな欠陥としての共通点を見出すことができます。 それは、「形式的に構築された指揮命令系統と乏しい実効性」、加えて「責任の所在の不存在」でしょう。
その事業活動が国民生活に及ぼす影響の大きさを十分認識するならば、何れの企業も易々と「想定外」等という表現を用いるべきではなく、「組織的な構造上の問題」として非常事態予防措置の未構築並びに緊急時の危機管理・対応能力の欠如も共通事項として掲げられるのではないでしょうか。
〈ご参考〉
企業年金連合会HP
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