2011. 7. 25 Friday
≪ドル安円高は、何故止まらない?≫
ドル円相場は、このところ80円を割り込んだレベルで安定的に推移しています。 今日の欧州市場では、3月17日以来となる78円近辺までドルが売り込まれました。
多くの識者・エコノミストらが円安反転への材料を用いシナリオを描き解説する中、従来に比べ遥かに過熱感や緊張感のないままに・・・。 何故、ドル安・円高は止まらないのか、中期的で大局的な観点からその真相に迫ります。
先ず、先日日経ニュースに掲載された識者らの見解(抜粋)を以下に紹介します。
・松島正之ボストン・コンサルティンググループ・シニア・アドバイザー
(元日銀理事)
「不思議な円高だ。 震災からの復興需要が一部で出てきているとはいえ、日本は将来高い成長力が期待できる国ではない。
外国人投資家が割安な日本株を買った影響があるかもしれないが、円高が続く理由にはならない」
・経団連、藤原清明経済政策本部長
「震災からの復旧は緒についたばかりで、サプライチェーン(供給網)も完全には戻っていない。 長期的に人口が減少し他のアジア諸国と比べれば成長率が見劣りするなかで、なぜ円が買われてこれだけ高い水準になるのか。
日本の経済・財政状況の悪さに世界の人が気づいたら、恐ろしいことが起きるかもしれないのでそれも心配ではある」
・モルガン・スタンレーMUFG証券、ロバート・フェルドマン経済調査部長
日本の貿易収支がやがて赤字に転落し、円相場が下落基調に転じる。
経常収支は黒字を保っていても、投資収益などの所得収支の黒字は海外への再投資に回るため、貿易収支が赤字になった時点で円安が進む可能性が高い。
ところで、与謝野担当相は最近の円高に関し「安全な資金の逃避先として、この瞬間は金、あるいは日本国債が選ばれている」と指摘。
円高は「海外投資家の世界全体の金融情勢に対する判断で起こっている」と分析していました。
(7月22日、閣議後の記者会見)
私の記憶が正しければ、この『安全資産としての円買い』なるフレーズが報道等で頻繁に使われるようになったのは、2009年11月下旬に起きた「ドバイ・ショック」あたりからかと思います。
それから、2年弱・・・いまだに、健在ですが、積極的な円買い材料を見出しづらい中で理屈を後付けされた感の強い言葉だけに、相当の違和感を伴って投資家を苦しめているとの印象は否めません。
さて、こちらは、「米ドル指数(インデックス)」の阪神淡路大震災の起きた1995年からの約16年間の推移です。
(Future.Source.com)
そして、こちらをクリックすると、米ドル指数の推移上に、主なグローバル・イベントをプロットした図をご覧頂けます。
その間、様々の国際的なイベントが起こりました。
今でこそ投資家等に馴染みの深いユーロもその歴史は浅く、発足は1999年1月のことです。 世界を震撼させた米国同時多発テロ事件の勃発から今年で10年になります。
この16年間に為替市場で協調介入が実行された数は4回。 内、ドル円相場に関する介入は3回、ユーロ安阻止を目的とする介入が1回となっています。
これまでの歴史において、協調介入は6回しかありませんので、大半が1995年以降に実施されているのです。
さて、米ドル指数の推移をみてみると・・・、
A: 1995年以降、2000年頃までは、概ね一方的なドル上昇
B: 2002年以降、2004年頃までは、一転してドル下落
C:
2004年以降、2007年半ば頃にかけて、ドル持ち直しから安定
D:
2007半ば以降、現在にかけて、ドルの一段安と安定
と、特徴を挙げつつ期間を大別することができます。
変動相場制は、1976年1月ジャマイカのキングストンで開催されたIMF暫定委員会で承認された体制で、為替レートを外国為替市場における外貨の需要と供給の関係に任せて自由に決める制度であることは、改めて説明するまでもありません。
しかしながら、その様な体制下において、米ドルインデックスがこれほどまでに見事なシェイプ(2000年前後を境にした左右の対象性や指数92が分岐水準となるドル高とドル安の領域区分等)が自然体で形成されたと考えるには無理がありそうです。
では、人為的に構成されたものなのか・・・?
100%の確率でYesというわけにはいきませんが、90%程度の高い確率であればYesと言えるでしょう。
誰によって・・・?
言うまでもありません。
米国政府及び金融・通貨当局によってです。
図上部に、A・B・C・Dの記号を付しましたが、ここには各々米国の国策(国益)を記載することが可能です。 それらを記載してみることで、米国の成長戦略や他国との協調或いは競合関係を読み解くことができます。
現在は「D」の範疇内にあります。
Dをそのまま継続させるのか、新たにEのステージへと移行させるのか・・・。
ここに、ドル円相場の今後を占う鍵が隠されています。
国家を永続的に繁栄させるための戦略は、一朝一夕に確立できるものではありません。 膨大な資源(人財、物資、資金そして時間)を注ぎ込んで完成され、時には強引にまた時には柔軟に軌道修正を図りつつ遂行されるものなのです。
さて、気になるDの欄には、何を記載すればよいのか、そしてその後のドル円相場の行方は如何に・・・・・。
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