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2012. 1. 8 Sunday
スタートダッシュ国は・・・アルゼンチン でした

年初2~6日、世界の株式市場の出足は順調で、主要な20カ国・地域の株価指数のうち約75%が上昇しています。 突出したのはアルゼンチンの「メルバル」、週間騰落率は +12.47%でした。 日経平均株価は大発会こそ堅調だったものの、5・6日と続落したことで -0.77%と下落組入りしてしまいました。


(出所 : 日本経済新聞社)


債務危機問題の燻り続ける欧州では、ドイツのDAXのみが上昇。一方、引き続き世界経済の成長牽引に期待のかかるBRICSでは、中国の上海総合のみが下落しています。

シンガポールや韓国、台湾、香港などの(近年では余り使われなくなりましたが)NIESもプラス領域にあります。

日本においては、一体改革を焦点とした政局の混迷化、 通貨流通以来では始めて100円を大きく割り込んでしまったEUR安、 約10%の原油輸入を依存しているイランを巡る国際情勢の悪化等が、固有の事情として重しになったと言えるでしょう。


ところで、こちらは、東京証券取引所が公表している「株券の一日平均売買代金の推移(月次)」です。

(出所 : 東京証券取引所。 第1部・第2部・マザーズ合計ベース)

昨年初は、月を経る毎に売買代金額が増加して行きましたが、3月の2兆円強をピークに、4月以降は概ね1.5兆円を上限に横這い。 しかし、11月に向けては下落傾向が現れてきた姿を見てとることができます。

東日本大震災に関連する復興需要等を当て込み日本株投資を進めてきた外国人投資家は、秋口以降は売り越しに転じ、その後は際立った資金流入をみせていないことが背景にあるようです。

外国人投資家は売買金額ベースでみると、そのシェアは60%を超えており、それらの投資家が取引を手控えてしまえば、市場の活気は一挙に萎えてしまうからなのです。
(こちらを クリック頂くと、2003年度以降の推移等を確認できます)


さて、その様な環境下において、オリンパス(証券CD:7733)を巡る一連の騒動は、外国人投資家の眼には若干奇異に映っているようです。

同社の第143期有価証券報告書によると、外国法人等の所有株式数等の割合は27.71%となっており、比率ではグローバル企業として平均的なレベルです。

マイケル・ウッドフォード元社長は6日、社長復帰に向けた臨時株主総会での委任状争奪戦(プロキシファイト)を断念することを表明。 大株主である日本の機関投資家や主要取引銀行からの支持を得られず、勝算がないと判断した等と報じられています。

これに関しては、一部の投資家から、同氏の社長復帰と委任状争奪戦の断念に対して落胆の声が出ている模様で、改革のスピードが遅くなるだけでなく、立ち直るまでに時間を費やせば費やすほどビジネス面へのダメージも大きくなるとみられていることが背景にあるからです。

大株主の米ファンド、サウスイースタン・アセット・マネジメントは6日夜、「取締役全員が辞任し新たな経営陣がオリンパス再生を率いるべきだ」との声明を発表しています。


昨年は、同社の他、東京電力(証券CD:9501)や大王製紙(証券CD:3880)等、企業統治が問題視される事件が相次ぎました。

日本取締役協会独立取締役委員会は、大王製紙、オリンパス問題に関し、その重要性に鑑み会員による緊急の会合を開き、①独立取締役の導入促進 ②市場経済システム健全化の為の厳正な処分 ③ソフトローにてのコーポレート・ガバナンス強化、を柱とする意見書を公表しています。
( 大王製紙、オリンパス問題における緊急意見 )

また、東京証券取引所は、上場企業での社外取締役や社外監査役など独立役員の監視機能を強化すするため、上場ルールの見直しに乗り出す模様で、経営陣の不正に気づいた場合、報告を求める役などを明記した新指針を作成するほか、独立役員の出身企業の開示義務を拡大する方針とのことです。

更に、昨年12月に公表された会社法改正の試案では、従来の監査役会を設置する会社、委員会設置会社に加え、第3の会社形態として、「監査・監督委員会設置会社」が提案されています。


この様にしてコーポレートガバナンスの強化策が講じられている訳ですが、ここで問題点を幾つか指摘しておきたいと思います。

先ず、東証等の「遵守すべき事項」として規定されている「独立役員」に関しては、一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役又は社外監査役を1名以上確保することが義務付けられています。

しかしながら、会社法328条1項にて、「大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない」と規定し、更に335条3項では、「監査役会設置会社においては、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない」と規定しています。

すると、資本金が5億円以上である上場会社は、監査役会の設置が必須となる為、この時点で東証等が義務付けているところの「独立役員」は確保できていることになります。 従って、社外監査役の内1名を届出しさえすればよく、本質的な実効性はともかく形式上の不備は生じません。

では、何故東証等はこの様に「緩い」規定を施しているのか・・・?
近年MBOによる株式を非公開化する会社が増加しています。 無論、その決断はコーポレートガバナンスの強化に関する負担の軽減のみを理由として下されるものではありませんが、ひとつの要因であることは間違いありません。

証券取引所としては困った問題が生じることになります。 上場会社の数の減少は、極論すれば死活問題に直結してしまうのです。


次に、「監査・監督委員会設置会社」に関して、監査・監督委員は取締役と位置づけられると考えられますが、その実態は現在の取締役と監査役を合体させた存在と言えるでしょう。

他の取締役とは別に株主総会で選任され、その選任議案には監査・監督委員会の同意が必要ですが、取締役としての権限に欠けるところはありません。 従って、監査・監督委員となる取締役は取締役会において傑出した存在感を示すことが要求されることになるのです。

当該会社は、業務執行者を社外取締役が監督する機関設計となっている点では評価し得るものの、制度導入のメリットは少ない上にハードルは高く、従前の委員会設置会社の二の舞となってしまわないことを願います。


オリンパスの一連の問題が、改めて外国人投資家に対し日本企業のコーポレートガバナンスや上場制度そのものに関する特異性を浮き彫りにし始めてきています。

形式上の用件は具備されていても実効性に乏しい当該法制や株式持ち合い等によって必ずしも経済合理的である投資行動が取られない不可解な点等を嫌気し、取引金額ベースでは60%超にてその存在を示している外国人投資家が日本離れを起こして行くにはそう時間がかからないのかもしれません。




この年末年始、NHKはスペシャル番組「ホットスポット最後の楽園」を放映していました。 これは、絶滅に瀕する生物や壮大な自然のドラマを記録した大型シリーズです。

因みに、「ホットスポット」は、元々、火山の活動地点を意味する概念ですが、生物多様性の分野では、多様な生物が生息しているにもかかわらず、絶滅に瀕した種も多い、いわば世界的な生物多様性重要地域の意味で使用されています。 マダガスカルやフィリピン諸島、チリ中部など世界中で34のホットスポットが選定されていますが、2005年の再評価に際して、日本列島もホットスポットのひとつとして追加されました。

他の陸地に生息する種から、海や大洋といった障害物によって隔絶されていたことにより、多様性が豊かな地域が生じたわけですが、(人間等による)外来種の導入は、競争よる在来種や固有種の絶滅、遺伝子汚染による生物種の変化を通じて多様性に強く脅威を与えることとなりました。

外来生物は、捕食者や寄生者、あるいは養分・水・光を在来種から奪う単に攻撃的な種であることがあります。 外来種は進化的背景や環境の影響によって競争力を持ち、在来種は同様の理由で外来種に対して防御的で競争力がないことがしばしば起こるのです。

しかしながら、必ずしも外来種のみが優勢なわけではなく、外来種との競争に勝ち残る能力を持つ(或いは進化を遂げることのできる)生物が、新たな環境に適合し存続して行くことにもなります。


我が国の株式市場は実質的には外国人投資家の動向に大きく左右される環境となっています。 彼らを「外来種」と決め込むのではなく、共存共栄の為にも発行会社、本邦機関投資家・個人投資家、証券取引所等が、自ら進化を模索して行く必要があるのではないでしょうか。

グローバルスタンダードに照らし、「絶滅危惧種」と定義されないためにも・・・。






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