2012. 2.29 Wednesday
≪「所得税 vs 付加価値税」? 共に増税ですが・・・。≫
フランス大統領選(4月22日第1回投票)に向け最大野党・社会党公認候補のオランド前第1書記は、民放テレビの討論番組で、当選した場合、財政再建策として富裕層に75%の所得税負担を課す方針を明らかにしました。
一方で、対抗馬のサルコジ大統領は日本の消費税に当たる付加価値税(VAT)を引き上げる方針で、税収をもとに企業の社会保障負担を軽減し、企業の競争力強化と雇用促進を同時に目指すと主張しています。
失業率が10%に迫る中、選挙の最大の争点は経済・雇用対策ですが、その財源確保としての増税策が、この国でもやはり政局を左右して行く模様です。
オランド氏は「大企業社長の平均年収は200万ユーロ(約2億1,600万円) だ。これが受け入れられるか」と語り、現行の仏所得税制の、年収7万ユーロ(約760万円)以上の所得層を対象に個人所得税41%を課している仕組みに、新たに二つ階段を増設する方針とのこと。
具体的には、
(1) 年収15万ユーロ(約1,620万円)以上の所得層に45%の個人所得税を課す。
(2) 別の種類の所得税率も調整して年収100万ユーロ(約1億800万円)以上の高所得者層の所得税負担率を75%にする。
というもの。
片や、サルコジ氏は、仏では低所得などで所得税の課税対象外となる世帯が約半数に上っているため、付加価値税を現行の19.6%から21.2%に上げ、広く負担を求めて行く考えです。
サルコジ氏が、「現在の経済状況で『節約しなくていい』と国民に言えるのか」と、オランド氏の政策公約に疑問を投げかければ、オランド氏は「公正であることこそがフランスを強くする」と主張。
論戦は白熱してきています。
因みに、下図は、本邦財務省公表の「個人所得課税の実効税率の国際比較(夫婦子2人(専業主婦)の給与所得者)」イメージ図です。
尚、仏では、所得税とは別途、収入に対して社会保障関連諸税(一般社会税等)が定率(現在、合計8%)で課されている。)が含まれる等の個別国の事情は、同省HPでご確認ください。
( 上図をクリックで、拡大します)
さて、原発大国であるフランスの今後のエネルギー政策も、今回の選挙結果に左右されることとなります。
原発政策でオランド氏はエネルギーの原発依存度を現行の75%から50%に引き下げる公約を掲げています。 これに対し、原発推進派のサルコジ氏は、オランド氏が廃炉を主張する仏最古のフッセンハイム原発を視察し、「政治的理由での閉鎖は受け入れられない」と牽制しました。
最新の世論調査によると、第1回投票の支持率でオランド氏は31.5%と27.0%のサルコジ氏をリード。
上位2候補で争う第2回投票が両氏の争いとなった場合の支持率では、オランド氏が58%で、サルコジ氏の42%を引き離している模様です。
ここ数年金融経済市場を震撼させてきた、ギリシャを中心とした欧州各国の債務危機問題は、茲許、ようやく一息つける状況になり始めています。
そのような中、オランド氏は債務危機対応で、サルコジ氏がメルケル独首相と主導し、各国の財政規律厳格化に向けて導入を決めた「新財政協定」の見直しを掲げており、もしサルコジ氏が選挙に敗れれば、債務危機に対する欧州の取り組みに多大な影響を及ぼす可能性も出ているのです。
ところで本邦では、例年より予算案審議が遅れ、14年ぶりに暫定予算を組む可能性が高まっています。
この国も、一体何処へ向かおうとしているのやら・・・。
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