2011. 4.19 Tuesday
≪僕は、「米国生まれ」です!≫
福島第1原発の原子炉建屋に入ったのは、多目的作業ロボット 『パックボット(PackBot)』。 放射線量や温度・湿度・酸素濃度を確認し映像を撮影、その様子が公開されました。 長さ70センチ、幅53センチ、重さ35キロのこのロボットは、米アイロボット社製で、かの『ルンバ』(自動掃除機)とは兄弟にあたります。
アイロボット社は、先端テクノロジーを消費者向け製品に作り上げて成功するという、典型的なアメリカン・ドリームを体現したと言われています。
マサチューセッツ工科大学(MIT)で最先端の人工知能(AI)研究を進めていた3人により1990年に創設された当時は、米軍用の戦場ロボットの開発が中心だったものの、その後20年近くを経て、人工知能やセンサー・機械工学などの多様な技術を組み合わせ、普通の家で使えるようなお役立ちロボットを消費者に広く浸透させることを成功させています。
( iRobot社HPより )
今般活躍をみせた『パックボット』ですが、米国防省国防高等研究計画庁(DARPA)の資金供与により開発が進められた多目的作業用ロボットで、紛争地域で数千台が導入され、2001年のアメリカ同時多発テロの際にも、多くの人々の人命救助に貢献したそうです。
また、世界ではいくつものアイロボット社のロボットが、地雷探査やピラミッド発掘現場、海洋調査など、危険を伴う作業から多くの人々を解放しています。
尚、同社の昨年の売上高は、約4億ドルで、近年では売上高の約60%が民生用とのことです。
ところで、福島第一原発でその能力を発揮しているロボットは米国生まれであって、なぜ日本生まれではないのか・・・? この様な疑問にぶつかってしまいました。
( iRobot社HPより )
日本には、二足歩行は無論のこと、オーケストラを指揮したりトランペットを吹いたりすることのできる人間型ロボットが存在し、2002年にはニューヨーク証券取引所で人類史上初めて取引開始の鐘を鳴らしたことを記憶しています。
また、2010年に開催された上海万博の日本館は、「世界最先端の技術を見たい(に触れたい)」として、入場5時間待ちが恒常化していましたが・・・。
ここで注目したいのが、C・アングル氏(ロボット研究者として世界的に知られるR・ブルックス氏の教え子)が、かつて米国メディアに語っていた以下の発言です。
『僕も長年、カッコはいいけれど非実用的な歩行ロボットを作ってきたことが気になっていた。でもある時気づいたんだ。ここが重要なポイントなんだ、と。ロボットが世界を変えるためには、実用的に振る舞い、現実的な結果を出すロボットでなきゃダメなんだ・・・。』
「眼から鱗」です・・・。
ロボットと言えば、日本では人間や動物に似た形態や動きを持つ開発が主ですが、アイロボット社は軍事ロボット開発で得られた技術力を、そのまま『使える機能』にこだわって非ヒューマノイド型ロボットの製作に専念しました。
このことが、この会社を大きく成長させ、世界のロボット産業をリードするロボット創造企業として認知させたことの源泉となっているのです。
加えて、国家が戦略的にも軍用ロボットの大口需要先としてこの会社をサポートしていることは見逃すことのできない事実でしょう。
Made in
Japan のロボットも各々個性に溢れまた技術的にも決して引けを取らない、否、むしろ最先端を走っているものも幾つも存在しているものと確信しています。
また、各開発メーカーにとっても完成させ実演披露する迄のご苦労は並大抵の労力・忍耐力・精神力を遥かに超えたエネルギーを要求されたことと思います。
が、この場で私が問題提起したいのは、これらの優秀なロボット達が世に送り出されながらも、「合成の誤謬の罠」に陥っている為、実社会にもたらす恩恵が逓減されてしまっているのではないか、という点です。
「特許権」「不正競争防止法上の営業秘密」等と関わるが故に、超えるべきハードルは高いと思いますが、今般の大震災を機に、国家の安全保障(但し、軍事目的でない)に重点を置く「真の産学官連携」体制を構築し我が国の先端技術・ノウハウを集約・実用化して行くことが、引いては国力の回復にも大きく寄与するのではないかと考えています。
〈ご参考〉
iRobot社 HP
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