2011. 4.27 Wednesday ≪アジア最後の経済フロンティア!≫
「アジア最後の経済フロンティア(未開拓市場)」との呼び声も高いミャンマーは、資源や労働力が豊富で、チャイナ・リスクを嫌う企業にとり、中国市場を補完・代替する「チャイナ・プラスワン」候補の1つとして存在感を増してきています。
これまで同国は天然ガスなど豊富な天然資源を擁しながら、軍政に批判的な欧米諸国の制裁などにより経済が停滞していました。 国際通貨基金(IMF)によると、2009年の国民1人当たり国内総生産は571ドル(約4万7千円)で東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国中最下位でした。首位シンガポールの3万7220ドルとはおよそ65倍もの開きがあります。
そのミャンマーは、先月30日に1962年以来約49年振りに民政移管を果たしました。
これまで同国を支配してきた軍事政権の最高意思決定機関「国家平和発展評議会」(SPDC)は解散し、権限を新政権に移譲したのです。
ところで、先日、「新・ミャンマーの最新ビジネス事情に迫る」と題する勉強会で駐日ミャンマー大使らのお話しを拝聴する機会がありました。 主なテーマは、①新政府について─新時代の新民主主義国家─ ②経済の現状と見通し並びに投資環境、です。
②の投資環境について、かい摘んで要旨を纏めると・・・。
・海外からの直接投資に対するミャンマーの政策は、経済全般の再構築および開発政策の一環との位置付け。
・同国の連邦外国投資法は、ほぼ全ての分野について外資の参入を認めている。
・同法に基づいて稼働する企業には一律30%の法人所得税が課税されるものの、事業開始から3年間はそれを免除する等の他に多様な優遇措置が手当される。
・石油、天然ガス、水力、石炭等のエネルギー資源や翡翠(ヒスイ)・ルビーに代表される鉱物資源が豊富。 森林が国土の約50%を占め、チーク等の森林資源も豊か。
・広大な手つかずの土地は様々な農業形態に適し、熱帯種から温帯種まで60種類以上に及ぶ作物の栽培が可能。
・勤勉な国民は高い技能を持ち、学習能力にも優れ、また近隣諸国対比で大幅に安価な人件費も魅力的(一般労働者の賃金は、日本の60分の1、中国の7分の1)。
「アジア最後の経済フロンティア(未開拓市場)」との形容にもうなずくことができそうです。
(Myanmar Tourism Promotion Board より)
人権を重視して経済制裁を続ける米欧やそれに歩調を合わせる日本を尻目に、中国やタイ、香港、韓国等は進出を加速させています。
「Directorate of Investment and Company Administration and Central Statistical Organization」の資料によれば、1990年〜2010年8月迄のミャンマーへの累積直接投資額は、多い順にタイが95億米ドル、中国が64億米ドル、香港が55億米ドルそして韓国が26億米ドルとなっておりこの4ケ国で全体の約75%を占めています。
日本は2億米ドル強で全体の0.7%にとどまっています。
尚、タイや中国など近隣国からの投資は、石油・ガス等の資源や電源開発が中心で全体の85%を占める一方で、農水産業や製造業・観光業への投資の割合はまだ低く、投資余地のあることを示唆しています。
さて、先日、「日本に暮らすミャンマー(ビルマ)人難民は4月9日、岩手県陸前高田市の避難所を訪れ、ミャンマー料理の炊き出しをおこなった」と報道されました。
水やプロパンガス、調理器具など全て自前で用意し、トラックで10時間かけて陸前高田市矢作町の避難所を訪問し、ミャンマー風チキンカレーなどのミャンマー料理300人分を調理し、被災者に振る舞ったとのことです。
炊き出しグループのひとりは、「これまで日本人や日本政府に助けてもらってきた。地震発生直後から、被災した日本の人たちのために何か役に立ちたいと思っていた。今回温かい料理を食べてもらうことができて嬉しい」等と語ったとされています。
冒頭で触れました「49年振りの民政移管」に関しては、閣僚のうち国防相や内相、外相など重要閣僚は軒並み軍出身者で固められ、国会も軍人や軍部翼賛政党が圧倒的多数を占めていること等から「軍政による民主化アピールに過ぎない」との声があるのも事実です。
ですが・・・。
「世界の工場」中国へ過度の集中が進んだ結果、人件費の高騰に加え、人民元切り上げや反日感情等のリスクも高まっており、中国工場の補完地を他の国に探るメーカーは多いと言われています。
「プラスワン」の最有力候補はベトナムですが、「ベトナムでは、米国向け輸出の増加に伴い、日本向けオーダーが入り難くなっている」と指摘する向きもあります。
エネルギー資源に乏しく、また食料自給率が40%程度にまで低下してしまっている我が国にあっては、時に「虎穴に入らずんば的な発想」を持って、この「アジア最後の経済フロンティア」に飛び込んでみることも一考に値するのではないでしょうか・・・。
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