2011. 3. 30 Wednesday
≪大手金融機関に、「遺言」提出を義務付け!!!≫
連邦預金保険公社(FDIC)など米金融規制当局は29日、大手金融機関に対し金融危機に際して迅速かつ手際よく破綻処理するための工程表(いわゆる「遺言」)を提出することを義務付ける規則案を発表しました。
同公社のシーラ・ベアー総裁は「事前に秩序立って清算させる計画を策定しておくことが、『 Too Big To Fail 』(大き過ぎて、つぶせないこと)を終わらせるカギとなる」と述べています。
米国から全世界に波及し、「Too big to fail 銀行」への公的救済が問題となった金融危機でしたが、2010年7月米国のオバマ大統領が、再発防止を狙いとした包括的な金融制度改革を図る「ドッド=フランク・ウォールストリート改革及び消費者保護法」に署名し、同法は成立しました。
これは1930年代の大恐慌後に成立した従来の金融監督システムを大幅に見直すもので、監督当局の役割や権限の強化・見直しから、金融機関のリスク管理、消費者保護までを広く網羅する内容となっています。
多岐にわたる課題の中で、同法が大きな重点を置いているのが、如何にシステミック・リスクに対処するかという課題でした。
そこで、
(1) システミック・リスクを把握するための新たなレギュレーターを設け、
(2) システミック・リスクを予防するためにシステム上重要な金融会社には
より厳格なプル ーデンス規制を課し、
(3) システミック・リスクが生じた場合の対応として秩序だった破綻処理の
枠組みを導入されることとなりました。
具体的には、
(1) システミック・リスク・レギュレーターとして「金融安定監督カウンシル」
を設置
(2) FRBはシステム上重要なノンバンク金融会社、総資産500億ドル以上の銀
行持株会社に対 して厳格なプルーデンス規制を賦課
(3) FDICによる大規模金融会社に対する秩序だった破綻処理の導入
(4) ボルカー・ルールの適用
等が手当てされています。
今般の規則案はこれらを受けたもので、バンク・オブ・アメリカやJPモルガン・チェース、シティグループなど500億ドル以上の資産を保有する銀行持ち株会社は、FDICとFRBさらに金融安定監視委員会(FSOC)に対し破綻処理計画を毎年提出することが義務付けられる、とのことです。
また、対象金融機関は、規則案が正式に導入された後、6カ月以内に第1回計画を提出し、毎年見直すことを要し、計画に影響を与えるようなことが起きた場合には45日以内に修正報告を行う必要があるようです。
FDIC当局者によれば、新規則の対象になる銀行は124行で、このうち米銀持ち株会社が26社。残りは外銀の子会社とのことです。
規制当局が金融システムにとって重要とみなす銀行以外の金融機関も、破綻処理計画の提出が義務付けられる模様ですが、金融安定理事会(FSB)のドラーギ議長は、「『大きすぎてつぶせない』銀行は2011年半ばまでは特定されない。」(昨年10月慶州にて開催のG20時点)としていました。
ところで、昨今、某電力会社の国有化の有無が話題となっています。
「その影響が大き過ぎて、つぶすわけにはいかない」としても、今後、賠償を中心的に引き受けるには負担が巨額過ぎ、電力事業の継続に支障をきたす可能性が高いといえます。
また、仮に原子炉を廃炉とした場合、解体費用は1基で400億円程度。 それに伴う放射性廃棄物処理にも200億円程度が必要等と試算されています。 加えて、原発で失われた電力供給力を回復するには代替電源施設等への設備投資が必要で、負担は経営に重くのしかかることでしょう。
今は、一刻も早く原発問題を安全で安定した状態にするため最大限の努力を払って頂きたいと思いますが、そもそも電力会社は、国のエネルギー政策と一体で事業を展開しているため、一時的にせよ発行済株式総数の過半を国に所有してもらう等して、経営基盤を安定化させることを早急に考えて行く必要があるのではないでしょうか。
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