2012. 2.19 Sunday
≪「今後5年を目途に、所要の法制上の措置を講じる」≫
「追加増税」の示唆です。
政府は17日、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革大綱を閣議決定しました。 その中に、上記文言がさり気なく挿入されています。
つまり、消費税の引き上げは5%では不十分であると明記されたことと同義なのです。
尚、同大綱の「はじめに」の「社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成」の一番最後のパラグラフでは、『2020年度までに基礎的財政収支を黒字化する等の財政健全化目標を達成するため、更なる取組を行っていくことが必要である。
』
と述べ、筆者がかつてのコラムで触れた 『消費税15%への地ならし』 が着実に始まっています。
これは、内閣府の経済財政の中長期試算によると、消費税を10%にしても、基礎的財政収支の黒字化目標は達成できず、消費税約7%分に相当する16兆6,000億円の財源が不足することなどが背景にあります。
この7%は、民主党が先日「年金抜本改革に関する財政試算」に関わる平成21年衆院選の政権公約(マニフェスト)に盛り込んだ年金一元化と月額7万円の最低保障年金を完全に実施した場合、消費税の10%への引き上げとは別に、2075年度に消費税換算で最大7.1%分の財源が必要であると述べた7.1%とは全く異なるものです。
従って、上を額面通りに捉えれば、将来の推定消費税率は、以下の様になります。
・ 2014年3月まで : 5 % (現行)
・ 2014年4月〜2015年9月まで : 8 %
・ 2015年10月時点 : 10 %
・ 2015年10月以降、2020年度までの間に : 17 %
・ 2020年度以降、2075年度までの間に : 24.1 %
17%の税率は、5%に慣れてしまった日本の消費者にはインパクトが大きいと思われますが、現在国家的債務危機に陥っている欧州諸国との対比では、未だ大よそ5%も低い水準なのです。
こちらは、財務省公表の「付加価値税率(標準税率)の国際比較」です。
( 上図をクリックで、拡大します)
欧州では、大半の国が20%以上となっていることが分かります。
因みに、ここ数年金融市場を震撼させ続けてきたギリシャのそれは、23%になっています。
ここでは、日本の5%が異常値とも思える程度に低く感じられます。
この差異と発行済国債の国内消化率の高さ(90%以上)が、『安全資産』として円の価値が押し上げられたことの背景になっています。
すると、今後は他国との税率の差が急速に縮小して行き、且つまた経常収支黒字の減少(場合によっては赤字転換)や金融資産の次世代への承継と取り崩し等によって国内消化率は必然的に低下すると考えられ、円の安全資産としての魅力は失われて行くこととなるでしょう。
先週の外国為替市場では、ドル円相場が大よそ5年かけて形成してきた右肩下がりのトレンド・ラインを上抜け、長期の円安相場への変化を示唆する胎動がみられています。
さて、話しを元に戻すと、政府は3月末までの国会提出に向け消費税増税関連法案の作成作業を進める方針です。 野田首相は、野党に重ねて協議を呼び掛けるものの野党は応じない構えで、同意を得られないままの関連法案提出となる可能性が高いでしょう。
「社会保障・税一体改革」に関しては、継続的に適宜、解説を加えてみることにして、以下に過去に掲載したコラムを紹介しておきます。
是非、ご一読ください。
≪関連コラム≫
2012. 1.25≪高所得者は、30%の所得税を収めるべき!・・・減税?≫
2011.12.16≪大増税国家への「足音」≫
2011. 6. 8≪大幅増税の根拠となる「附則第104条」≫
2011. 2.26≪国の資金繰りに火がついた・・・?≫
2011. 1.22 ≪消費税率15%への地ならし・・・?≫
2010.12.17≪雇用と格差是正が核心とされた税制改正・富裕者層を狙い撃ち≫
2010.10.23≪相続税は課税強化、贈与税は緩和へ・・・?≫
≪ご参考≫
2012. 2. 7 閣議決定 「社会保障・税一体改革大綱について」
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