2011. 8. 2 Tuesday
≪今週は、「水の週間」です!≫
毎年8月1日は「水の日」で、その歴史は意外に古く今年で35回目となります。
そして、この日を初日とする一週間を「水の週間」と位置付け、水資源の有限性・水の貴重さ及び水資源開発の重要性について国民の関心を高め・理解を深めるため様々な啓蒙活動が開催されています。
今年は、改めて水の「ありがたさ」を心に留めた方も多いことでしょう。
今年の「水の週間」のテーマは、『水の恵み~東日本大震災を機に考える~』
パッと思い付くだけでも、津波・被災地での断水・原発の冷却水喪失・ペットボトル買占め・放射能汚染水道水・猛暑による脱水症状そしてゲリラ豪雨と大洪水など、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。
ところで、先日、国連本部テクニカルアドバイザーを務めるグローバルウォーター・ジャパン代表 吉村和就氏の水資源に関するお話しを拝聴する機会がありました。
「水は国家の安全保障」であるとして、世界レベルでは水資源をどの様に捉えておくべきか、日本の携わり方など高い次元からの内容に触れることができました。
同氏は、キーワードとして次の2つを挙げています。
ひとつ目は、「ライバルの語源はリバー」・・・。
ヨルダン川・ナイル川・チグリスユーフラテス川では水利権や配分を巡って紛争が長期化、ドナウ川・ライン川では環境汚染問題、中国とメコン委員会の間では国際政治上の問題にまで発展している北漢江ダムなど、世界各地では水資源に関して国家間での争いが絶えないとのこと。
背景にあるのは・・・、
地球上には約14億k㎥もの水が存在しているものの、その内約97.5%が海水等で残りは地下水等の淡水ですが、人類が利用可能な淡水源は更にその一部で地球上の水量の0.01%に過ぎないということ。
過去100年間で、人口は3倍に増えたが、水需要はなんと6倍にもなった。
水需要は将来的に現在の2.6倍は必要であること。
特に経済発展の激しいアジアでは生活様式の向上が見込まれ、水使用量に拍車を掛けるであろう。
一言で纏めると、「グローバル規模で水不足」問題に直面しているということです。
二つ目のキーワードは、「日本の雨は1泊2日」・・・。
日本は四方を海に囲まれ、今のところ水不足には至っていない。 アマゾン川・メコン川など河口からの距離が1,400kmを超えるスーパー大河とは対極的に水の循環効率が良いことの恩恵。
しかし、東日本大震災を境に、日本も水問題に直面しつつある。
スーパー等の店頭から水のペットボトル等が消えた局面では、海外からの緊急輸入に頼らざるを得なかった。 事実、韓国の済州サンダースの日本からの受注は、例年の30〜50倍に上ったと推定される。
また、我が国のカロリーベースでの食料自給率は40%、これを支える灌漑用水量は570億㎥ / 年。すると海外からの食料輸入に伴う「仮想水量」は640億㎥ / 年にも及び、国家目標である食料自給率50%を達成するためには灌漑用水が不足することになる。
日本もうかうかしてはいられないことを実感すると共に、逆にビジネス・チャンスにも成り得るのでは、と考えました。
(Source : NASA/ESA)
さて、先日、地球からはるか120億光年の彼方にあるクエーサー(准恒星状天体)に、なんと地球の140兆倍もの水が存在することが観測されたと報道されました。
このクエーサー(准恒星状天体)は地球の340億倍の質量を持つと言い、数百光年にわたって広がる水蒸気を、コロラド大学ボルダー校のジェーソン・グレン准教授らが見つけたとのことです。
現在主流となっている仮説では、宇宙は136億年前にビッグバンによって誕生したと考えられていることから、宇宙誕生から少なくとも16億年後(太陽系誕生のはるか昔)には、既に水が存在していたことになりますね・・・結構、驚きです。
最後に、吉村氏が説明されていた「ウォーターフットプリント」の概念を紹介しておきます。
完成品を作るまでの水使用量を、「中間投入水」と「最終工程投入水」に分けて分析してみることも大事である、とのことで、具体的には・・・。
乗用車1台を製造する場合、部品作成で使われた水、つまり「中間投入水」の割合は90.2%、一方「最終工程投入水」の割合は僅か9.8%に過ぎない。
これを実量でみてみると、「中間投入水」を58.3 ㎥使用するのに対し、「最終工程投入水」は6.4 ㎥で、本当のエコカーを作るには、「中間投入水を削減すること ! 」との見解でした。
尚、中間投入水割合の高い製品は、車の他では、パソコンで86%、携帯電話で95% とのことです。
それらを踏まえて、同氏は、WFP(ウォーターフットプリント)の理想系は、自社のみでのWFPではなく、原料や部品製造に関わる水から顧客販売や廃棄物処理に至るまでの水の総量が判れる姿が望ましいとしています。
確かに、省エネ・低炭素化は「実現できて当たり前」の時勢になってきています。
新たな「CSR指標」として、この『WFP』を積極的にステークホールダーズに示して行くことも、更なる企業価値向上に寄与するものとして一考に値するのではないでしょうか。
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