2011. 2. 11 Friday
≪世界の食料価格・・・史上最高値を更新≫
世界の食料価格の月ごとの変化を定期的に監視している国際連合食糧農業機関(FAO)の食料価格指数の最新版によると、世界の食料価格は7
ヶ月間連続で上昇し、1 月には史上最高値に達しました。
穀物や砂糖等の価格の上昇は、チュニジアやエジプトの政治的な混乱の一因にもなっています。
砂糖は02〜04年平均に比べて4倍、大豆や小麦などの穀物は2.5倍に跳ね上がっており、オーストラリアの洪水など産地の天候不順、経済成長を続ける新興国の食料需要の増加、投機マネーの流入などが重なったのが、価格高騰の原因とされています。
日本でもコーヒーや食用油の値上げなどの動きが相次いでいることはご存知の通りです。
FAOによると、「指数は1月に平均して231ポイントとなり、2010年12月から3.4%上昇した。 これは測定を開始した1990年以降(実質および名目で)最高水準である。
変化のなかった食肉を除いて監視をしているすべての食品グループで大幅な価格上昇を記録した。」としています。
尚、同機関の穀物専門家は、「世界の食料価格に対する上昇圧力が収まる気配がないことを明らかに示している」と述べ、「この高価格は今後何ヶ月も続くだろう。
特に価格の上昇は食料輸入代金のやりくりの問題に直面する低所得食料不足国や、食料へ所得の多くを費やす貧しい世帯にとって重大な懸念となるであろう。」と警鐘を鳴らしています。
この国際的な食料価格の高騰への対策を話し合うため、世界20カ国・地域(G20)としては初めての農業大臣会合が6月にパリで開かれることになりました。
穀物市場は、原油などに比べて価格形成が不透明とも言われており、G20の農相会合では、FAOなどと連携して生産量や備蓄、需要の見通しなどの情報を正確に把握するための手法について議論がなされる模様です。
干ばつを背景に、ロシアなどの生産国が小麦やトウモロコシの輸出を禁止するなどの動きも広がっていることから、輸出規制のあり方も検討。 途上国の食料生産を圧迫しかねない外国勢による農地の乱開発を監視する仕組みづくりが議論されることも見込まれています。
ところで、1月27日に財務省より公表された「貿易取引通貨別比率(平成22年下半期)」の「日本への輸入の項目」を見てみると、米ドルの割合が約72%、円が24%となっています。
10年前の平成12年度下半期のそれは、米ドル約71%、円約24%で、ほとんど変化していないことが分かります。
日本の輸入品目のトップが恒常的に「原油及び粗油」であり、その決済通貨が米ドルであることが大きな要因ではありますが、現状の米ドル円の為替レートが歴史的にも低いレベル(83円程度)であるにも係らず、ジワリジワリと食料品の値段が上昇し始めていることには留意しておく必要があります。
政府は2009年11月20日に発表した11月の月例経済報告で、日本経済は「緩やかなデフレ状況にある」と認定し、現在でもその様な状態が続いているとの認識が定着していますが、このところ「円高還元セール」等と銘打った小売業界の販売促進活動もなりを潜めてしまいました。
景気の長期低迷状態等の影響による所得の伸び悩みや国の財源不足等を背景とする増税施策の加速等に対しては、食料品・衣料品等の生活必需品に係るデフレ現象が緩和的役割を果たしてきていました。
そのデフレ効果を高める一因となっていたのが、茲許の円高の進展であったことに疑いの余地はありません。 しかし、この円高は日本への投資が活発化したこと等を背景としてた積極的な円高ではなく、(今もってなお理解に苦しんでいますが)国際諸情勢が不安定な中での消去法として選択された円高でした。
日本財政状況の一段の悪化が改めて議論される中にあって、本当に円資産が安全なのか・・・? ここにも改めて疑問符が付けられようとしています。
きっかけやその時期を正確に言い当てることは極めて困難であると思います。
が、物価下落というある意味で恩恵をもたらしてきた円高が終焉を迎え、一転そして急激な円安トレンドが始まった場合、食料自給率が約40%である我国は大きなネガティブインパクトを被ることになるでしょう。
「悪性インフレ」が顕在化する前に、周到な戦略を練っておく必要がありそうです。
〈ご参考〉
FAO HP
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