2011.5.13 Friday ≪インドの転機≫
2011年4月13日に北京で開催されたブラジル・ロシア・インド・中国4カ国首脳会議に、南アフリカ共和国が初参加したことに伴い、グループの正式名称が「BRICS」となりましたが、旧名称である「BRICs」が世に送り出されてから間もなく10年の節目を迎えようとしています。 メンバー国のインド・・・成長への転機が訪れたのは、1991年のことでした。
英領インドがインドとパキスタンにそれぞれ分離独立したのは1947年のこと。 GDP成長率の推移をみると、1900~47年は概ね年1%であり、イギリスの植民地搾取が如何に激しかったかを垣間見ることができます。 独立後の成長率は年3.5%、80~90年代は6%の高成長を遂げています。その10年間で5%以上の成長を遂げたのは、中国・マレーシア・ベトナム・インドの4カ国に過ぎません。
そして、21世紀に入ると最近では8~9%の成長率で推移しており、購買力平価ベースのGDPでは、米国・中国・日本に次ぐ世界第4位の経済大国となっています。
歴史的に、インドはイギリスはじめ植民地支配を2世紀に亘って受け搾取され続けられまし。 このため、独立後インド人には、二度と外国の支配があってはならず、自国の物は自国で生産し、外国資本の導入は阻止したいという意識が強かったと言われています。
その結果、技術革新が遅れて競争力を失い製品の輸出ができず、貿易収支が赤字になってしまいます。 それへの対処方法は、インド人出稼ぎ者からの送金と、ロシアとのバーター取引の2つでした。
しかし、冷戦構造の崩壊でロシアとのバーター取引も途絶え、更に90年の湾岸戦争勃発により出稼ぎ者が湾岸地域から追い出されて海外からの送金も途絶えてしまいました。このため、外貨準備高は7億ドル(輸入の1〜2週間分程度)まで減り、IMFの管理下に入る寸前まで追いつめられたのです。
( NAVER HP より )
さて、先日、堂道前駐印特命全権大使のお話しを拝聴する機会がありました。
要点を列記すると・・・、
・日本との貿易額は近年急増中(2002年:4,940億円→2009年:1兆43億円)であるものの、互いに世界貿易に占める割合は未だ低く(日本:0.9%で23位、印:2.2%で14位)、拡大のポテンシャルは大きい。
・日本の対印直接投資額は近年急増中ではあるものの、2000〜2010年度の累計額は約37億ドル(シェア3%: 7位)で、首位のモーリシャス:同472億ドル(シェア43%)や2位のシンガポール:同102億ドル(シェア9%)等との差は大きい。
・2011年2月16日に正式署名が両国間で行われた「経済連携協定(EPA)」は、8月頃を目途に日本の国会承認を経て発効する可能性が高まった。
・日本にとりBRICS諸国との初めての、インドにとり先進国との初めてのEPA 。
物品貿易に加え、税関手続き・サービス貿易・自然人の移動・投資・知的財産・ビジネス環境整備・政府調達等を含む包括的な協定。
・インドの発展の最たる特徴は、第1次産業から製造業などの第2次産業を飛び越えて、IT産業に代表される第3次産業が発達していることであるが、ここにきて第2次産業である製造業が伸びてきている。
・農林水産物の95%が未加工のまま販売されているが、中間所得層急増への需要を充たすため食品加工業が急拡大し、且つ将来はそれらを輸出することになろう。
そして、これらの事項に加え、特に印象に残ったのは以下の様な発言でした。
「マンモハン・シン首相は、大蔵大臣を務めていた湾岸戦争勃発当時、日本がインドの外貨準備の急減に対応するための「緊急支援商品借款」(203億円)他を迅速に供与し、国際収支危機からの脱却を支援してくれたことを、今でも大変恩義に感じている。
その思いが、『日印間の戦略的グローバル・パートナーシップ』構築に現われている。」
大使は、その一方で日印間と日中間の人的・経済的交流の度合を比較した場合、約30倍の開きがあることを残念に感じておられました。
例えば、在留邦人数では、インドの約4,000人に対して中国は約13万人。 直行航空便数では、インドの17便/週に対して、中国は556便/ 週という具合です。
( NAVER HP より)
冒頭で述べた経済危機を契機として、インドは経済改革を進め外資を導入することになりました。 その際の原動力となったのがITソフトウェア産業です。
同産業は、90年代は年率50%、2000年以降は30%平均で伸びて行き、現在の経済発展につながったことは記憶に新しいところです。
インドは総人口に占める20歳未満の割合が約43%、GDP対比での貯蓄率は30%を超えています。
この国にも間もなく大量消費の時代が到来することでしょう。
約20年に亘って日本に感謝の意を表し、門戸を大きく開き続けてくれている間に、その恩恵を活かし、御社の更なる成長に向けた布石を着実に打っておきたいタイミングは、遅くともまさに今なのです。
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