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2010.11.13 Saturday
≪かつては、この様な国でした・・・≫

「先進国の中で最も良好な経済実績を上げている国の1つである。 1993年から2000年にかけて、経済は80%という空前の成長を遂げた。 2000年だけをとってみても10.7%の成長率を上げ、OECD諸国の中では6年連続で最も高い成長率を記録した。」 「国家財政は健全な状態にあり、2000年にはGDPの4.7%に相当する黒字を計上した。 GDPに対する一般政府負債比率は2000年には約40%にまで大幅に低下した。」(当該国日本大使館資料より一部抜粋)

この国は・・・アイルランドです。

「このように高い経済成長率を維持できている要因としては、堅実な財政・金融政策、外国資本の直接投資、賃金抑制政策に対する社会的コンセンサス、EU構造調整基金、熟練労働力の増加、旺盛なハイテク製品輸出、国内需要の堅調な伸びが挙げられる。」とされています。

脅威的な高度成長と健全な財務体質をどの様にして身に付けたのか・・・・・。
歴史的な大きな変革を取り組めた、取り組める環境にあったからこそ、と考えています。
では、「歴史的な大きな変革」とは何か・・・。 それは、「単一通貨ユーロの導入」と「IT革命によるグローバル資本主義の進展」です。

「グローバル資本主義」は、一般的に「国家間の障壁を取り除き、自由化を推し進めた資本主義のグローバル化のこと」等と定義はされますが、端的に言えば、先進国の当該企業が自国内での成長に限界を感じ、更なる成長を求めて発展途上にある国に安価な労働力と消費市場の拡大を確保する目的で進出して行き、結果として被進出国の経済システムや文化等が進出国のそれに統一的に適合させられてしまう現象です。

無論、被進出国の労働者に恩恵は及びます。 成果実績主義の果実も含めた所得水準の向上です。 尚、投資がインフラの構築整備であったならば、生活の利便性も著しく向上することは言うまでもありません。

さて、アイルランドは1991年1月のユーロ圏誕生時の発足メンバー国のひとつであることはご存知のことと思いますが、11カ国のうち優勢言語を英語としている唯一の国なのです。 従って、IT技術に関する根源が米国発であり当初の共通言語が英語であった点は、アイルランドにとって大きな利点となりました。

加えて、低い法人税と安い賃金は重要であり、それに惹かれて外国企業、とりわけアメリカの多国籍企業は生産基地とヨーロッパ事業本部をアイルランドに立地したと言われています。 外国からの投資でアメリカは80%という圧倒的なシェアを占めており、現在アイルランドで活躍しているアメリカ企業は600社、その従業員は10万人で、アイルランドはまさにヨーロッパ市場を狙うアメリカ企業の基地となっています。

しかし、そのアイルランドが今、揺れに揺れています。

アイルランド国債10年物利回りは10月末に過去最高の7%台を付けると、今月11日には初めて9%を突破。安全資産とされるドイツ国債との利回り格差も過去最大にまで拡大しています。 直接のきっかけは、10月末メルケル独首相が「国債の債務不履行時には民間投資家にも負担を義務づける」との提案を行ったこと。 アイルランドが掲げる総額150億ユーロ(約1兆6800億円)の財政赤字削減の実現性が疑問視される中、財政破綻を警戒する投資家が同国債の売り姿勢を強めた模様です。


アイルランドは金融危機の直撃を受けた大手銀行への支援などが負担となったことに加え、進出多国籍企業の撤退、景気低迷等による税収減等から財政が急速に悪化、現在の財政赤字は、国内総生産の32%に達してしまいました。

アジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席している国際通貨基金(IMF)のストロスカーン専務理事は「アイルランドからの接触はない」としながら、将来何らかの援助が必要になればそれに対する備えはするつもりだと述べた、と報じられています。

「歴史的変革」の恩恵でかつては絶頂を極めたアイルランドが、サブプライムショック以降の一連の金融危機により急激に暗転してしまったことは、「グローバル資本主義」が内包している脆弱性と危うさを改めて認識させることになりました。





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