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2010.11.23 Tuesday
≪意識レベルの高い、海外機関投資家≫

東京証券取引所から「上場制度に関する投資家向け意見募集に対して寄せられた意見の概要」が公表されました。 長引く景気の低迷やデフレ状態に加え、上場会社のコーポレート・ガバナンス体制が未整備であるとの指摘などを背景に、いっこうに活況を帯びてこない株式市場ですが、海外の投資家は高い意識を持って市場を見つめています。 意見具申した投資家の内、海外投資家の割合は74%に達しています。

同取引所は、平成20・21年度の重点課題として、上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備を掲げ、@第三者割当てに対する対応、A独立役員制度の導入、B支配株主による権限乱用を防止するための施策の整備、C議決権行使の促進を進めてきていました。

上記@〜Cに関する施策について、各々「満足・やや満足・どちらともいえない・やや不十分・不十分」(合計100%)の何れかを選択することで、内外の投資家より評価がなされています。

「不十分・やや不十分」の合計の割合が高かった順に、独立役員制度の導入について(83%)、第三者割当てに関する対応について(76%)、支配株主による権限乱用を防止するための施策の整議について(57%)、決権行使の促進に関する施策について(36&)となっています。

今般は、「不十分・やや不十分」の合計の割合が最も高かっ、独立役員制度の導入について触れてみたいと思います。

「独立性の基準が不十分であり、他の主要市場におけるコーポレート・ガバナンス原則で謳われた独立性の趣旨を満たすものとなっていない。 主要な取引先や多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント等の専門家について、世界標準に即した明確な定義が必要である。 独立役員がいるにもかかわらず、ポイズン・ピルが採用されたり、少数株主の持分希薄化を招く資金調達がなされたり、低い価格の公開買付に賛同したケースがあり、これらの事例は、独立性が形だけとなっており、独立性が担保されていないこと、及び、真の意味で独立して取締役会に挑み、少数株主の利益を代表することができる役員が不足していることを示すものである。」

上は、数多くの自由意見の内、最も本質を突いていると私が考えるものです。 特に「独立性の形骸化」や「少数株主の利益代表との認識の欠如」は解説するまでもありませんが、そもそも「独立役員」などといった玉虫色の表現で妥協策を模索したところに問題があります。

本来は、社外取締役が真の独立性を堅持しつつ取締役会等の場で、少数株主の利益代表であるとの認識をも踏まえ、積極的に議論に参加して行く、そしてその結果として各種のステーク・ホールダーにとって最善の戦略が導かれる、などがあるべき姿と考えています。

私はこれまで、多くのオーナー系会社の社長とこの社外取締役のあり方等について意見を交わしてきました。 残念ながら、認識や発言内容は大よそ同じで、「社外の人間に(自らの)会社の経営が分かるわけがない。」 「形式上整える必要があったから選任したまで。 取締役会に出席して賛成票を投じてくれさえすればよい。」等といったものです。

一方、社外取締役の方は、「取締役会にはそこそこの頻度で出席はするが、発言は控えている。」 「社内にひとりしかいない社外取締役が何を言ったところで、何も変わらない。」等といった悲惨な状況です。

かつて事業法人同士の株式の持合いが行われていた時代があり、それはお互いの会社にとって「もの言わぬ株主」として巧みな制度としてワークしていました。 基本的にこれと同様のことでしょう。 「もの言わぬ取締役」・・・。 外国人投資家の目には、「密室的な取締役会で重要事項が決定されてしまう。」等といった写り方をしてしまうのは無理からぬことかもしれません。

政府内には国外からの投資を呼び込み、長期間低迷する景気の回復の原動力としよう、との考え方がありますが、企業等が事業推進に関わる主要な事項の決定にあたっての不透明性を払拭できないのであれば、いくら税制優遇投資区域等を設置してみても、多くを期待することはできないでしょう。

では、解決のために先ず何をすべきが・・・?
人材の確保が困難な上、コストもかかる等といった企業側の事情が斟酌され、玉虫色にて設置が義務付けされた「独立役員」なる制度を発展的に解消し、「真の独立取締役」の設置を義務つけるべきです。 それも1名ではなく、最低2名。 できれば取締役の3分の1程度にまでしたいものです。 無論「真の」については、更に厳格な定義付けを行う必要があります。

独立取締役の主たる任務は少数株主の利益代表として獲得した情報等を取締役会に還元し、主要な経営判断の材料として融合させて行くこと。 また、英断の下された主要事項を当該投資家に適時適法にフィードバック等をおこなって行くこと。 そして、その循環の仕組みを永続的なものとして構築させることです。

「J-SOXの導入運営、四半期開示の実施、国際会計基準の導入に加え、コーポレート・ガバナンス強化対応ともなると人員の設置も含めコストがかかって仕方ない。 おまけにうちの会社は外国人の持株比率も極めて低い、上場していることの負担に耐えかねない。」 ごもっともなご意見です。 実際に幾つかの上場会社は、上場していることのメリットとディメリットを改めて検討し直し、株式の非公開化を決断されています。

株式を公開することは、企業家としての成功の証であることは疑いの余地はありませんが、企業としてのゴーイング・コンサーンを考えた場合、これまで以上に厳密にメリット・ディメリットのバランスを客観性を持って定点観測して行く必要があります。

尚、弊社では「独立取締役の選定」に代表されるコーポレート・ガバナンス対策や株式の非公開化に関するアドバイスを行っています。
ご遠慮なく、お問い合わせください。


〈ご参考〉
東京証券取引所 HP



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