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2010.12.30 Tursday
「始めは処女の如く、後は脱兎の如し」
さて、今年も残すところあと僅かとなりました。 過日のコラムでもお話ししましたが、来年は「卯年」です。 「兎」と「卯」では文字が異なりますが・・・(後程、説明します)。 さて、上記の諺の出典は「孫子」の九地篇「是故始如處女 敵人開戸 後如脱兎 敵不及拒」で、 「始めは処女の如く振る舞い相手を油断させ、脱兎の如く逃げろという兵法。」を意味しています。 相場においても若干解釈は異なりますが、基本中の基本原則といえます。

あらかたの国語辞典等では上記の解釈がなされていますが、相場の世界では・・・。
先ず、前段部分の「処女の如く」についてですが、「純粋無垢な乙女の様に、おとなしく弱々しく見せて敵を油断させ」等として大多数の市場参加者を一挙に欺くことは不可能であり、この世界では「純粋無垢な乙女の様に、慎重にそしてそろりそろりとためらいつつ相場に入って(ポジションを構築して)行き」と解釈します。

次ぎに「後は脱兎の如く」については、単に素早く逃げる(撤退する)等といった単純な意味ではなく、「利がのった局面は無論のこと、相場が急反転した場合においても、脇目も振らずに脱兎野如く市場から脱出(撤退)せよ。」というものです。

相対的に相場に不慣れな投資家とプロの投資家との、そのトレーディング手法において最も異なる(差が出易い)点は、自らのポジションが不測の事態等によってアゲンストの方向に急展開した時に採る行動です。

例えが妥当か否かはさておき、「隣家で火災が発生した場合を想定します。 外から大きな『火事だ・・・!』との叫び声が聞こえてきました。 窓を覆うカーテンには既に赤黄の炎の影が激しく揺れています。」 さて、どの様な行動を採りますか・・・? バスルームに駆け込み洗面器いっぱいに水を浸し、延焼を防ぐため窓越しに何回も何回も放水します・・・確かに・・・。 いや、先ず出火場所とその原因をつきとめるべく、現場検証を優先させます。 とんでもない、先ず119番に電話をしなくては・・・誰もかけていない可能性があるから・・・。

私なら、先ず間違いなく家から飛び出して逃げます・・・。 身の安全確保が最優先で、その後のことは、後でじっくりと考えればよいのです。

理由がよく分からないが急激に相場が反転してしまった場合、利がのっていようがいまいが、先ずは保有ポジションを一旦手仕舞うことが肝要です。 勿論、これまでの蓄積や含み益の大きさ等によって、対応に向けた速度は異なるものと思われますが、先ず損益を確定させましょう。

相場の急変動に慣れていない投資家は、ほとんどの方が共通して、「きっかけは何か」としてキーボードを叩き続けてニュースを検索してしまいます。 が、そんなことをしている間にポジションはどんどん悪化して行きます。 それに疲れると、「まあ、そのうち戻ってくるさ」として現実から目を背け勝ちな行動をとってしまいます。

そうです・・・もうお分かりでしょう。 プロは決してポジションを「塩漬け状態」にすることはありません。 何故なら、チャンスは何度でも巡ってくることを経験則として得とくしているからです。


では、中国の故事をもうひとつ・・・「守株(株を守る)」。
こちらは、『韓非子』の説話「守株待兔(しゅしゅたいと)」。 木の切り株にウサギがぶつかって死んだのを見た農夫が、楽して儲けたと思ったため、農作業をするのをやめ、ひたすらウサギが再び切り株にぶつかるのを寝て待ったことから、旧慣にこだわる愚かしさを意味する、とされています。
日本の童謡「待ちぼうけ」はこの故事を元にして作られました。

相場の世界でも同じです。 たまたまの「まぐれ当たり」によって、一時的にいきなり懐が温かくなったとしても、ほぼ同様の相場展開等はそう簡単には巡ってきません。 寝ていて儲かるほど甘くはなく、機に応じた戦略が求められるのです。


おっと、触れ忘れてしまうところでした・・・。
「卯年」の「卯」ですが、本来の読み方は「ぼう」です。 門を無理に押し開けて中に入り込む様を表した文字と言われており、漢書等では草木が伸びて地面を覆うようになった状態等と解釈されています。 本来的には、「ウサギ」とは関係ないようです。 が、遠い昔に、無学の庶民に十二支を浸透させるため、動物の名前を当てたことが起源のようで、たまたま「卯」と「兎」(動物)の順番が一致したことに由来しているようです。



では、皆様、どうぞ良い年をお迎えください!!!






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