2011.1.15 Saturday
≪自由貿易協定(FTA)を上回る目標!!!・・・日米TPP初協議≫
日米両政府は、2日間にわたって開いていた環太平洋連携協定(TPP)の情報交換を含む「日米貿易フォーラム」の協議を終えました。
米国は、全面撤廃を原則に掲げる関税の取り扱いやサービスなど主要交渉分野について、昨年12月に合意した米韓FTAなど過去のFTA交渉を上回る最高水準の経済連携を目指している考えを示しています。
個別分野では米側が改めて牛肉問題で懸念を示し、日本が現在米国産牛肉の輸入について月齢20ヶ月以下の牛に限定している点に関し、科学的根拠が薄いとして規制緩和を求めた模様です。
また、郵政問題については、政府が株式を保有したまま業容を拡大していることに関し、民間との公平な条件が保たれない場合は参入障壁になる得るとの見方を示した、と報じられています。
一方、日本側は、米国は食品安全法が輸入食品の安全強化を打ち出しており、日本企業が競争上不利になるとの見解を示し、また、パソコン等に使用されるリチウムイオン電池が自然発火する危険性があるとして米側は同電池の輸送に規制案を打ち出している点について、日本企業の活動に影響を及ぼす恐れがあると指摘した模様です。
今般の協議は情報交換が目的であるため、ストレートに市場開放を求められたものではありませんが、日本は交渉に参加すれば、焦点となる農産品の関税問題を含め大幅な貿易自由化を要求されることになると思われます。
とこで、株式会社帝国データバンクは先ほど、「TPPに関する企業の意識調査」の結果を公表しました。 「政府は2011年6月までにTPPへの正式参加の是非を判断するとしている。 経済団体を中心に参加を支持する意見が大きい一方で、関税撤廃による国内農林水産業への影響などを懸念して、農協や漁協などの生産者団体を中心に、参加に反対する意見もある。」(同社)
等、見解に相違がみられることもあり、昨年12月中旬〜今年年初にかけて調査を実施したとのことです。
本調査結果の詳細は同社HPにてじっくりご覧頂きたいと思いますが、私と同感の意見が挙げられていましたので、言及しておきたいと思います。
それは、「日本がTPPに参加するための道筋として、最も必要とするものは何か?」との問いへの回答に関してですが、総じて「TPP参加後のビジョンが明示されていないこと」への懸念が反映されているもので、「日本の長期にわたる総合ビジョンの検討、説明、策定が先決で、そのなかでTPP
の位置づけを議論することが必要」や「政府はもっと明確なビジョンを明らかにし、国民に不安を与えないこと」等でした。
TPPへの不参加は、企業がグローバルに展開する生産流通ネットワークから日本が脱落することにつながるでしょう。 そして日本企業の生産拠点の国外流出を加速し、投資適地としての日本の魅力を失わせる可能性が高まります。
経済のグローバル化がここまで進んだ以上、グローバル生産拠点としての魅力を他国と競わなければ、アジア太平洋の経済成長を取り込めず、日本は更に没落してしまう危険すらあります。
また、TPPには単なる経済的重要性を超えた政治的重要性があることも忘れてはなりません。 TPPには、米国・チリ・オーストラリア・ニュージーランド・ベトナム・シンガポール・マレーシアなどがすでに交渉に加わり、更にタイなどのASEAN諸国が関心をもっているといわれています。
わが国とも関係が深い環太平洋の多くの重要国が交渉に加わっており、多国間EPAであるTPPには環太平洋の秩序づくり・ルール設定の役割が期待されているのです。
上述した事項に加えて、昨年来、米国がこのTPPに関して極めて積極的に推進しようと動きまた呼応した発言が顕在化してきています。
その意味するところは・・・。
端的に言うならば、「中国包囲網の構築」です。
確かに、中国は近年、政治的にも、経済的にもそして軍事的にも、世界に向けて大きな影響力を及ぼすことができる程に成長しました。
それを単に脅威と捉えるかについては議論のあるところですが、日米同盟の下、「中国包囲網」を共同構築することが必然とされるのであれば、殊更、政府にはTPPへの参加に関して「長期的総合ビジョンの策定」と「国民宛の明示並びに説明」が不可欠であり、果たすべき重要な責務といえます。
〈ご参考〉
帝国データバンク HP
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