2010.10.02 Satsuaday
≪ドル買い介入額とドル建て輸出額からの一考察≫
財務省は8月30日〜9月28日の期間に行なった外国為替平衡操作(いわゆる日銀介入)の状況を公表した。 その額は約2兆1千億円で、市場参加者らによる1兆7〜8千億円との推定を3〜4千億円上回るものでした。
さて、財務省貿易統計によれば、日本の単月の輸出総額は5兆5千億円前後、内米ドル建ては50%弱です。 すると日銀介入額と米ドル建て輸出額はほぼ均衡しているようにみえますが・・・。
さて、私は9月15日の日銀介入が行われた翌週、知人の上場輸出会社3社のCFOに個別ヒアリングを行ってみました。 主旨は、今次の介入後にそのタイミングを捉え積極的にドル売り予約を入れたか、や今後の相場についてどの様な見通しを立てているか、といったものです。
残念な結果でした。 皆さん異句同音に「期中の社内レートやそもそもの採算レートとの関係から、85円台では市場動向を見守ってしまい、また88円台〜90円前後にかけて大口の予約を実行しようと試みていた為、折角の機会を逃してしまった。」というのです。
更に、「ようやく届いた声に応じた介入には大きく期待しており、できれば95円程度まで押し上げて頂けると有難い。」とのことでもありました。
企業は単なる器ではありません。 事業を運営する主体は、経営者であれ部門の長であれ、そして配下の全ての方々であれ、皆自然人(人間)なのです。 昨今の取り巻く環境が極めて厳しい情勢下にあっては、誰しもが売上げや利益を最大限に確保し得る機会を模索しつつ業務に邁進しています。
各財務責任者が述べていた、85円台を見送って、更なる円安水準で為替予約を入れるよう努力したことは決して欲張り等といったものでなく、延々と待ちわびたその機会がまさに今訪れたといった極自然の感情がもたらした行動であったと言えます。
単月のドル建て輸出相当額を原資に、一時的に85円台まで相場を押し上げただけの介入・・・そんな機械的なつじつま合わせで済んでしまうほど世の中は単純ではありません。
「市場(参加者)との対話」が如何に重要であるか・・・。
これは、今般の事例のみならず、「民意を得ない政策の押し付けが、結局国富を削ぐことになる」ということを端的に物語っています。
機を捉え、政策担当者に改めて申し入れたいと考えています。
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