2011. 10. 3 Monday
≪ Gold から「CO2排出権」へと、取引をシフト≫
「電話の後自宅を訪問され、『元本は必ず戻る。 すぐ倍になる』などと勧誘を受け、CO2 排出権取引の契約をした。 その後『追証が必要になった』と連絡があり、支払ったお金が全てなくなった。」・・・国民生活センター等には、最近、「CO2(二酸化炭素)排出権」取引に関する儲け話に関するトラブル相談が急増している模様です。
同センターは、「消費者はCO2 排出権そのものではなく、欧州の市場で取引のある『CO2 を排出できる権利』の価格相場を参照するCFD取引を行っているものと考えられる。
CO2排出権のCFD取引は、『ロコ・ロンドン金取引』と同様、ハイリスクで複雑なデリバティブ取引である。」
更に、「以前トラブルが目立っていたロコ・ロンドン金取引の分野は2011年1 月の商品先物取引法の施行に伴って規制強化がされたことから、業者がCO2 排出権のCFD取引の分野に対象商品をシフトさせていることが推測される。」等としています。
「CO2 排出権」は商品先物取引法での指定商品にも金融商品取引法の金融商品や金融指標にも含まれず、どちらの法律も適用除外とされています。このため、取引業として商品先物取引法上無許可・金融商品取引法上無登録業者であったとしても直ちに違法な販売勧誘といい難く、巧みに「法の隙間」がつかれているのです。
2010 年度以降を四半期別にみると、2010 年10-12 月期が2 件、2011 年1-3 月期には55 件と急増、更に2011 年4-6 月期には115 件へと倍増しています。
また、2011 年7-9 月期は58 件となっています。
一方、同時期のロコ・ロンドン金取引に関する相談件数は、2011 年1-3月期には148 件であったものの、4-6 月期には34 件、7-9 月期には15件、と急激に減少しており、CO2 排出権取引の相談件数の増加と入れ替わるような推移をたどっていることがわかります。 ( ← クリックで、推移図を表示 )
ここで、茲許、CO2排出権取引に関係する相談が急増している背景等を端的に見て取れる事例を紹介(抜粋)しておきます。
「原発事故の関係でCO2
が増えると勧誘され、CO2 排出権取引を契約した。」
1 カ月前、電話勧誘後に訪問してきた業者から「投資に興味がありませんか。 現在、原発事故で電力が不足しており、今後は火力発電が中心になる。
CO2 が増え価格が上がってくるのでCO2 の売買をする」といった勧誘を受けた。
投資に興味があるわけではないが、環境への手助けになればとの思いと、営業員の年齢や名前が息子と重なって冷たくできないとの思いで契約を交わし、当日90 万円、さらに1 週間後に90 万円を払った。
しかし、後日「価値が50%下がったので追加金が180 万円必要だ」と言われた。 勧誘の際にリスクがある事は聞いていたが、追加でお金が必要と言われ動揺した。 また、売買する時には連絡すると言っておきながら勝手に取引を始めていた事に疑問を持ち始めた。
その後も何度か追加金を請求されたが「もうお金がない」と断った。 取引の仕組みもわからずに儲け話に乗った自分も悪いが。
業者の対応には納得できない。半分でも返金してほしい。(2011 年5 月受付 契約者: 60 歳代 女性)
大震災や伴う原発事故の勃発により社会的不安心理が増幅していた時期だけに、それを巧みに利用した手口には強い憤りを感じます。
さて、前述した「ロコ・ロンドン金取引」ですが、「ロコ」とは「…において」「…渡し」といった意味で、よって「ロコ・ロンドン金取引」とは「ロンドンにおいて金を受け渡しする取引」ということになります。
また、証拠金取引であるため、ロンドン市場の金価格が期待どおりに変動した場合には大きな利益を得られますが、予想に反した場合には大きな損失が発生し、また当初支払った証拠金を上回るおそれもあります。
同センターは当時、「相談は2006年の下期から入り始め、2007年度は前年度の3.6倍に急増した。 2007年6月に特定商取引法施行令が改正され、これらの取引等の仲介サービスが特定商取引法の規制対象となったが、相変わらず相談が寄せられている。」等として注意を呼び掛けていました。
同取引に関する相談は、例えばこの様なものでした(抜粋)。
業者から電話があり「確実に儲かる、信用できる良い話があるので資料を送る」と言われた。数日後、資料が届いた頃に再び電話があり「1日でも早く」としつこく勧誘され、断り切れず、もっとも低い取引単位の30万円だけ契約した。
そのすぐ翌日から何度も追加を催促する電話があったが、もうこれ以上お金を用意できないので断っていた。
ある日、「金が暴騰しており、抽選に当たらないと取引できないほどである」「抽選に参加しないか」と言われ、最初は断っていたが、「絶対に儲かる」と何度も強調され、あまりにしつこかったので「抽選だけなら」と応募した。
1時間ほどすると「抽選に当たった」と電話があり、そのとき「しまった」と後悔した。
「やめたい」「お金がない」と何回も頼んだが、「今やめると違法取引になる」「お金がなければ、サラ金から借金すればよい」と強い口調で言われ、何も言えなくなってしまい、やむを得ずサラ金から110万円借りて、合計150万円を送金した。
数日間悩み、やっぱりやめたいと思い業者に連絡したところ、「いま取引をやめると20数万円しか返せない」「損を取り戻すには、もう360万円必要」と言われ驚いた。 もうこれ以上取引をしたくない。 (契約当事者:40歳代 男性)
ところで、時代は今や「金融経済が実体経済を大きく振り回す」かの如く激変してしまいました。
こちらは、過去3年間の「GOLD -Spot Price (EOD) CME」のWeekly Chart です。
( クリックで拡大 )
( Source : StockCharts.com )
2008年後半には700を割り込んでいましたが、小刻みな上下動を繰り返しながらも、現在にかけて基本的には一貫して右肩上がりの形状を示しています。
価額は2倍強です。
前出の40歳代の男性がその後、事案をどの様に処理されたのかは知る由もありませんが、もし仮にこのような悪徳業者に騙されるのではなく、自らの相場観に基づいて「金投資」を試みていたとしたならば・・・・・。
残念でなりません。
絶対に儲かる等といった「旨い話し」が転がり込んでくることなど、まずあり得ません。
金融商品等に関しては、「買っても負けても自己責任!」を肝に命じ、投資・運用して行く他はないのです。
〈ご参考〉
国民生活センター HP
〈ご参考コラム〉
2011. 7. 8≪大震災便乗型の悪質手口、依然続く≫
2011. 2.19≪未公開株や社債のあやしい儲け話・・・急増中≫
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