2010.12.4 Saturday
≪外国人投資家の買い越し続くが・・・≫
東京証券取引所は、11月26日、2010年11月15日から11月19日(11月第3週)における株券の投資部門別売買状況を発表しました。
それによるとこの週に外国人投資家が株を売った総額は3兆2729億0784万6000円なのに対し、買い総額は3兆3919億4080万0000円となり、差し引き1190億3295万4000円の買い超しとなっています。
これは先週から続いて三週連続の買い超しです。 日本株買いを本格稼動させたのか、外国人投資家のストラテジーをヒアリングしてみました。
「米国に景気減速懸念がある上に、円高基調が継続している。」
「日銀の金融緩和政策が不十分。 円高に歯止めをかける意気込みが感じられない。」
「何故、増資に拘るのか。 社債を発行して資金調達した方が資本効率が高いはずなのに・・・。」
「政治不信感が高まりつつある中、中国や朝鮮半島等の地政学リスクが顕在化してきた。」
「銀行等が自己資本を強化すべく持合解消に動き始めたことと相俟って、事業法人はIFRS(国際財務報告基準書)導入に向け投資有価証券の圧縮に乗り出し始めた。」
これらは大よそ全て、11月上旬迄のもので、これらを背景に日本株を相当程度にアンダーウエイトにしてきました。
では、今はと言うと・・・。
「米国株が上昇基調に転じ、日本株の出遅れ感が目立ってきた。」
「日本株よりアジアを中心とする新興国株の方が構造的に強気との見方に変わりはないが、アジア株にはバリュエーションの行き過ぎ感やインフレ懸念が出て来ている為、ヘッジとして日本株にもう少し資金を投入する必要がある。」
「景気の長期低迷状態や政治不信等はおおむね織り込み済みであり、これ以上の悪化は想定し難い。」
「グローバル展開の観点では、出遅れ感の高い銘柄がを丹念に仕込んで行く局面を迎えつつある。」
「株主への利益還元を重視している銘柄を積極的に組み込んで行きたい。」
「アジア展開に積極的で、コスト構造の低い諸国に設備投資を行っているところに魅力がある。」
等、依然として相対論の域は脱してはいないものの、これまでまるでパッシング(無視)し続けられてきた日本株に触手を動かし始めた様子です。
外国人投資家のスタンスは短期間の内に様変わりしてしまいました。
何がきっかっけとなったのか・・・?
他でもありません。
米FOMCが11月2日に決定したQE2(6,000億ドルの追加国債買い入れ策)です。
本来は景気対策としての、そしてデフレ懸念払拭の為の有効な手段としての機能が期待されていましたが、その後に発表された米国の経済指標が予想以上に強かったことや行き場所を探り続けてきたリスク・マネーが米株式市場に大量に流れ込んだこと等から株価は上昇、加えて将来のインフレ懸念が一挙に台頭し、米長期金利が急反発をみせたのです。
リスク・マネーは、米長期金利上昇をきっかけとしたドル安円高の自律反発による投資資産の減価緩和期待やアジア諸国特に中国の本格的金融引締め懸念から想定される株式市場の調整過程へのヘッジ目的等を勘案し、日本株の組み入れウエイトの低さを解消すべく大幅な買い出動に転じたのです。
確かに過去を振り返ると、外国人投資家は2007年央以降、日本株をアンダーウエイトにしてきました。 また、今後1年間に最もオーバーウエイトとしたい市場として新興国市場を挙げています。
従って、日本の株式市場が積極的に物色され、日経平均株価で20,000円をうかがう展開は予想し難いとは言えますが、再度12,000円をトライする局面が到来しても不思議ではありません。
但し、確かに言えることは、東証の場合で外国人投資家の株式保有比率は約25%となっていること、更に売買シェアでは60%程度にまで達していることです。
何を意味するのか・・・?
外国人投資家に見向きもされない銘柄は、まず上昇余地が乏しいであろうということ。 外人投資家にも相応にコミュニケーションの場を提供する為の門戸を開き、真摯な姿勢で接点を保つ会社の株式には更なる上昇の期待感が持てるということです。
二極分化がはっきりしてくる可能性が高いということでもあります。
単に、グローバル展開している企業であるとか、世界に通用する技術力を持っている、ROEが高い等といった事柄だけではなく、確立されたコーポレートガバナンス体制や戦略的コミュニケーションスキルが要求されています。
それらを装備し、ガラパゴス日本から力強く羽ばたいて行く企業が数多く出現してくることを願って止みません。
〈ご参考〉
東京証券取引所 HP
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